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ヨムヨムエブリデイ

七月の鯨

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今年も30日に夏越の大祓の茅の輪をくぐり、なんとか無事に上半期を終えた。もう7月だなんて。
今朝は、土砂降りの中、出勤。ドロドロ。ここのところ呉明益『複眼人』(KADOKAWA)を読んでいるのだけど、もう1冊なにか軽めのものをと思い、なんとはなしに東直子穂村弘『短歌遠足帖』(ふらんす堂)をかばんに入れる。昼休み、おにぎりを頬張りながら本を出したら、どちらの表紙にもクジラがいて、あら、と思った。だから何?と言われればそれまでだが、こんなしょうもない偶然で気持ちなんて結構弾んじゃうものなのだ。ちょろいね。帰りは雨もあがり、買い込んだパックの寿司とおやつと傘をぶらぶらさせて、疲れてはいるけれど気分よく歩く。

直角

ずっと曇り空。明日は休みだ。退勤時あまりにうれしくて、ニュースゼロのエンディングで「今夜もゼロにお付き合いいただきありがとうございました」とお辞儀する有働さんのように腰を直角に折って「お疲れ様です」と言う。直角のお辞儀、意外と難しい。ふくらはぎがぶるぶるする。

あの人元気かな?と、たまーに思い出して訪れるブログがある。小さな写真と文章のこぢんまりとした佇まいのブログで、そんなに頻繁には更新されない。Twitterとかもやっていないので、外でスマホを見る習慣がないのだが、仕事の帰り、ふと思いつき、しばらくぶりで覗いてみた。山に登ったり、銭湯に行ったり、出張したり、本を読んだり、映画を見たりの日々の生活が淡々と綴られていて、ああ、相変わらずなんだ、よかったと思った。「その人が笑っててくれたら、あとはもう何でもいい、そういう感じ」と大豆田さんが言ってたのは、こういうことなのかな。顔も本名も知らない、かすかに接点があっただけなのに、どこかで、日々変わらず生活してるんだと思うと、もうそれだけで心強いような気がする。広大なネットの海に小石を投げるようなものかもしれないけれど、投げた小石は自分のところにちゃんと届いて、くたびれてヘロヘロの帰り道が、ヘロぐらいになった。

ケンタッキーにしない?

梅雨空。急にイレギュラーの休日出勤が入ったりして、シフトがぐちゃぐちゃで収拾がつかなくなっている。天候のせいか疲れのせいか、ずっと眠い。脳の咀嚼力ゼロなので、こんなカタログ本を流動食のように噛まずにペラペラ眺めている。

『名場面で味わう日本文学60選』(徳間書店
『キリンが小説を読んだら サバンナからはじめる現代文学60』(書肆侃侃房)

名場面は、神奈川新聞のリレー連載「日本文学あの名場面」を、キリンは、本よみうり堂の「現代×文芸 名著60」をまとめたもの。特に、名場面のほうは、各選者が推す名場面とともに楽しめるのがよかった。こんなのを読むと、未読の本は読みたくなるし、既読のものもまた読みたくなってしまう。

みんなへろへろなので、本日のランチはボスの計らいでケンタッキーに。すんごい久しぶり。チキンフィレサンドセットを注文。「フィレサンドをわんぱくに頬張る気怠いわ・た・し」の脳内セルフイメージは、これ(1ミリたりとも合っていない)。

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僕の好きな文庫本(9)

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椎名誠・選 日本ペンクラブ編『素敵な活字中毒者』(集英社文庫

カバー・山藤章二 鼎談解説・目黒考二 鏡明 椎名誠

このたび、ちくま文庫入りした岡崎武志編『愛についてのデッサン 野呂邦暢作品集』の帯にでかでかと「文庫になることが奇跡の1冊」とある。そうか、奇跡なのか(城山三郎風)。
ちびっこの頃読んだこの『素敵な活字中毒者』に、『愛についてのデッサン』から「本盗人」が選ばれていて、それが野呂邦暢を知った最初だった。当時愛読していた「あやしい探検隊」のシーナさんだ!とただそれだけの理由でこの文庫を買った記憶があるが、神保町で指を真っ黒にして古本のペーパーバックスを漁るJ.J.氏や、クイクイとテンポよくミステリーを読む殿山泰司の文章が楽しくてよく読み返した。その後、沢木耕太郎佐藤正午のエッセイで、野呂邦暢のことを目にするたび、あ、あの「本盗人」の人だと認識はしていたが、『愛についてのデッサン』を一冊通して読んだのは、2006年にみすず大人の本棚に入った時。佐藤正午の解説付きだった。みすず書房から随筆コレクションの刊行や、文遊社から小説集成の刊行を経て、2021年に『愛についてのデッサン』の文庫、しかもちくま文庫を手にして、胸熱。

「あやしい探検隊」のシーナさん!ぐらいしか知らなかった頃に、こんな豪華メンバーの文章に触れていたなんて、なんと贅沢なことか。その贅沢さは、今になってよくわかる。ただ、21人の執筆者の中で女性は田辺聖子だけ。別に、目くじら立ててピリピリしているわけでは全然ないけれど、昔の本を読む時は、こんなところに自然と目がいくようになった。

それいります?

日曜日。やっと休み。午前中、雨。窓の外の木々の緑が濃くてつやつやしている。

昔から炭酸飲料が大好きで、コーラやサイダーを浴びるようにぐびぐび飲んでいたが、シュワシュワしてさえいれば何でもいいのだということに気づいてからは、無糖の炭酸水を愛飲している。ずいぶん健康的になった。いちにーサンガリアの伊賀の強炭酸水や、サントリー天然水スパークリングに浮気しつつ、今はウィルキンソン赤ラベルに落ち着く。このたび「日本コカ・コーラ史上最強炭酸」が謳い文句のICY SPARKという新商品が出たので期待し購入し、さっそく飲みながらラベルをみると、原材料名:炭酸、酸味料、塩化Caとあり、ええっ、それいります?と思わずシンシンの口癖がでてしまった。結局シンプルなウィルキンソンに戻る。何を試しても必ず基本に戻るの法則。

dancyuの7月号を繰っているとハンバーガーやホットドッグを食べたくてたまらなくなる。「のむよむ。家飲み派のためのブックガイド」が毎号楽しみなのだが、今月号は、遠野遥と吉本ばなな、先月号は、滝口悠生江國香織、その前が、高山羽根子吉田篤弘と、なんかいつも絶妙な人選。先日読んだ西村賢太の日記にもこの連載のことが言及されていた。ちょうど一年前の号だ(肉料理の特集号)。

 帰室後、届いていた『dancyu』七月号を開く。随筆所載号。一人飲みの際のお薦め本として三冊を挙げたが(藤澤清造二冊、田中英光一冊)、その書影がイラストであるのが素晴らしい。新鮮、かつ味わいのある好発想。これはもう一冊を別途購入して、拙文所載保存の段ボール函と、六畳間の清造参考文献棚とにそれぞれ納めることとす。『一私小説書きの日乗 堅忍の章』(p.256)


明日はちょっと早めに出勤して、朝マックドトールのジャーマンドックを食べていこう。