僕の好きな文庫本(9)

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椎名誠・選 日本ペンクラブ編『素敵な活字中毒者』(集英社文庫

カバー・山藤章二 鼎談解説・目黒考二 鏡明 椎名誠

このたび、ちくま文庫入りした岡崎武志編『愛についてのデッサン 野呂邦暢作品集』の帯にでかでかと「文庫になることが奇跡の1冊」とある。そうか、奇跡なのか(城山三郎風)。
ちびっこの頃読んだこの『素敵な活字中毒者』に、『愛についてのデッサン』から「本盗人」が選ばれていて、それが野呂邦暢を知った最初だった。当時愛読していた「あやしい探検隊」のシーナさんだ!とただそれだけの理由でこの文庫を買った記憶があるが、神保町で指を真っ黒にして古本のペーパーバックスを漁るJ.J.氏や、クイクイとテンポよくミステリーを読む殿山泰司の文章が楽しくてよく読み返した。その後、沢木耕太郎佐藤正午のエッセイで、野呂邦暢のことを目にするたび、あ、あの「本盗人」の人だと認識はしていたが、『愛についてのデッサン』を一冊通して読んだのは、2006年にみすず大人の本棚に入った時。佐藤正午の解説付きだった。みすず書房から随筆コレクションの刊行や、文遊社から小説集成の刊行を経て、2021年に『愛についてのデッサン』の文庫、しかもちくま文庫を手にして、胸熱。

「あやしい探検隊」のシーナさん!ぐらいしか知らなかった頃に、こんな豪華メンバーの文章に触れていたなんて、なんと贅沢なことか。その贅沢さは、今になってよくわかる。ただ、21人の執筆者の中で女性は田辺聖子だけ。別に、目くじら立ててピリピリしているわけでは全然ないけれど、昔の本を読む時は、こんなところに自然と目がいくようになった。