y o m u : n e l

ヨムヨムエブリデイ

文庫の詩集

二連休の二日目。初日の昨日は疲労がピークで寝て過ごした。今日は友人と昼ご飯(とんかつ、うまかった)を食べ、紅茶とケーキで休憩しながら『VIVANT』の話などをだらだらし、日没前に解散。相変わらず昼間は暑いけれども今週後半から気温が下がる予報なので期待しよう。

帰りに大きな書店に寄る。久しぶりだから棚の間を歩くのが楽しい。岩波文庫の左川ちか詩集を買った。昔から詩をうまく読めなくて苦手意識があるのだが、なにしろ792円だから文庫ラヴァーとしては買わずにはいられない。笙野頼子の母の発達がアケボノノ帯とカップリングで岩波現代文庫に入っていた。
以前からファンであるノンフィクション愛好家のurbanseaさんが、梯久美子『この父ありて』の石垣りんの章を読んで石垣に興味を持ち、岩波文庫の『石垣りん詩集』を買い、帰宅後に毎日朗読し、その後中公文庫から出たばかりのエッセイ集『朝のあかり』を読み、石垣りんを座右の書にするようになったと何かに書かれていた。『石垣りん詩集』を玄関に置き、帰宅後に毎日立ったまま、少しずつ朗読を続けるうちに読み終えたというところがかっこよかった。私も『左川ちか詩集』を玄関に置いて毎日朗読しよう。さっそく最初の「昆虫」を朗読してみる。うーん、よ、よくわからん。川崎賢子による解説を先に読むことに。

王谷晶『君の六月は凍る』を読んだ。タイプのちがう2作が収められているが、私小説的な「ベイビー、イッツ・お東京さま」がよかった。

だんだん近づいてくる

柴田元幸高橋源一郎『小説の読み方、書き方、訳し方』より

このところ、同僚や友人など身近でコロナに感染する人が増えた。激増というか爆増というか。体感的にはこれまでで一番多いんじゃなかろうか。症状はピンキリで、しんどい人はめちゃしんどそう。勤務シフトの調整でわちゃわちゃしている。

シンセミア』を先週読み終えた。疲れた~。ラストきちっとまとめたなあと思っていたら、最後の最後でえっ!となった。長年、頭の隅っこにあった『シンセミア』をようやく読めて満足感に浸っている。
リストマニアなので、何かを読んでいてリストが登場したら、とりあえず記録代わりにバシバシ撮っていて、そうして溜まったリストが山ほどある。↑の写真は高橋源一郎が選んだニッポンの小説30冊。2009年刊行なのでちょっと古いが、こういう系統のリストには必ず『シンセミア』が出てくるのだった。平成の日本文学ベスト10とか。で、気にはなるけれど、なぜか自分には遠いという意識があり、なかなか距離が縮まらなかった。2020年に『キャプテンサンダーボルト 新装版』を読み、2021年に『ブラック・チェンバー・ミュージック』を読み、2023年の冬に『オーガ(ニ)ズム 』を読み、夏にとうとう『シンセミア』を、もう感無量である。だんだん近づいてきてくれてありがとう。近づいていったのはもちろん私だが、そんな単純な一方通行ではないような気がしている。

20年後のシンセミア

八月最後の日。代休をもらう。昼間はまだまだ残暑が厳しい。食欲はもりもりあり、夏バテといふうでもないが、暑さによる疲れが少~しずつ体の奥に蓄積してきた感じがある。午前中、銀行と郵便局などに行き、まだ早かったのでコメダでモーニング。ランチで混み合うまで小一時間ほど本を読む。
阿部和重シンセミア』(講談社文庫)下巻に突入。今年の初め、文庫化されたばかりの『オーガ(ニ)ズム 』を読んでいた時間があまりにも楽しかったので、サマーリーディングはボリューミーな『シンセミア』にしようと決めていた。『シンセミア』が刊行されたのが2003年だから、20年後に初めて読むことになった。しかしまあ、盗撮、ロリコン、暴力、スカトロ、ドラッグなど猥雑な世界がこれでもかと描かれていて、気持ち悪くて厭ったらしいんだけど、どんどんページを繰らずにはいられない。グワーッと唸りながら読む。朝日新聞斎藤美奈子旅する文学【山形編】に「山形の文学は夏に読むのにふさわしい。背中にふっと冷気が走るからだ。」とあったが、『シンセミア』を読んでいた「あのめちゃくちゃ暑かった夏」は、ずっと記憶に残りそうな気がする。サマーリーディングにして正解だった。いつか神町に行ってみたいなあ。若木山に登りたい。
夜はカレー。煮込むのが暑いのでキーマカレーに。うまかった。『シンセミア』あと少し。

未来散歩練習

空と海と文庫本

夏休みが、あっという間に終わり、またいつもの労働の日々が始まった。夏休みのお伴は、杉井光『世界でいちばん透きとおった物語』と川端康成『みずうみ』の文庫2冊だった。『世界でいちばん透きとおった物語』は、絶対に予測不能な衝撃のラスト、ネタバレ厳禁!なんて言われると、どんだけ衝撃なのか気になって確かめてみたくなるじゃないですか。で、本当に透きとおってたし、非常に手間がかかってるなと思った。『みずうみ』は、以前読んだ小川洋子×佐伯一麦川端康成の話をしようじゃないか』のなかで、佐伯一麦が川端のベスト1と言ってたのでこの機会に再読。

休み明けから、通勤、昼休み、寝る前に少しずつ楽しみに読んでいたパク・ソルメ『未来散歩練習』(斎藤真理子訳、白水社)が終わってしまった。終わったけど、まったく終わった気がしない。また最初から読んで、終わらない。読みはじめは手ごわいというか、なかなか入っていけなかったが、3篇目ぐらいからぐんぐん引き込まれた。読めてよかった。語り手の「私」が『チボー家の人々』を読む日々が、高野文子の『黄色い本』と重なった。

─── 何かやりたいこと、ないですか。
─── そうね、ただコーヒー飲んで本を読んで、散歩できればそれでいいのよ。(p.203)

フォーメーション

出勤。さすがに電車がガラガラ。休日体制で職場の人も少ないし仕事もいつもより楽だ。後日代休をもらえるのでそのほうがいい。今日の出勤メンバーは、男女男の3人で、ドリカム?というか、globe?ELT?マイリトルラバー?(古い!)いきものがかり?じゃあ私ボーカルですねというフォーメーションだ。誰も脱退せずに滞りなく時間が過ぎ、定時で退勤。明日から3日間の夏休み。台風が心配だが、前半チャチャッと帰省してくる予定。たった3日間だけれど、休み中に読む本を選ぶのがもうめちゃんこ楽しい。

ぼくは一ヶ月の旅ということになるととりあえず十冊、というふうに考えている。その内わけは翻訳ミステリー三冊、翻訳SF二冊、時代劇もしくは歴史小説一冊、ノンフィクション二冊、軽いエッセイ一冊、古典の名作もの一冊、というのが標準ラインである。/椎名誠『活字のサーカス』より

そうそう、バランスも考えないとね。このシーナさんの『活字のサーカス』はPR誌「図書」の連載をまとめたもので、「図書」の連載は、いきなり岩波新書に入るものがたまにあって嬉しいのだが、ここ何年か楽しみに読んでいた斎藤真理子の連載をまとめた来月刊行予定の『本の栞にぶら下がる』は、岩波新書ではないみたいだ。
さて、本選びの続きを。こんなにあれこれ悩んでも、たった3日間だから、結局1冊も読めずに終わっちゃったとなるかもしれないが。