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ヨムヨムエブリデイ

待合室でミステリ

たて続けに仕事関係の葬儀があったり、友人が事故で緊急入院して、仕事終わりや休日に付き添ったりしていたら、あっという間に11月後半が過ぎ、12月になっていた。
友人はしきりに、すまない申し訳ないというのだが、付き添いは、ずっと本を読んでいられるから全然大変じゃない。検査や処置待ちの時間に、日当たりの良い喫茶コーナーで、ご自由にどうぞと書かれたコーヒーや紅茶を啜りながら、サイモン・モックラー『極夜の灰』や、陸秋槎『喪服の似合う少女』を読んだのはとてもいい時間だったな、と思えるのも、自分が痛い苦しいつらいの当事者ではないからだけれども。
ちょうど「ミステリマガジン」で今年のミステリランキングが出たばかりで読みたい本が渋滞している。こういったアンケート集計型のランキングの楽しみは、ガッツリ上位に食い込む鉄板ものより、少数の人しか選んでいない下位の地味な作品を見つけて読むことだ。
今日は、金曜日に退院したばかりの友人と買物に。味の濃いジャンクなものを無性に食べたいというので、ラーメンと餃子を食べ、おやつにたこ焼きを。いろいろ一段落して一安心。どうか師走は穏やかに過ごせますように。

昨日のツヅキ

久しぶりに何も用事がない日曜日。今日は一日うだうだして、先週末から読み始めたミステリを読んでしまうぞー。
読んでいるのはワシントン・ポーシリーズ3作目の『キュレーターの殺人』。このシリーズ、3年ほど前に『ストーンサークルの殺人』『ブラックサマーの殺人』の2作目までを読み、面白いことは面白いが、ズブズブとハマらなかったので、そこで止まっていたのだ。しかもそれぞれが600~700頁と分厚くて、次に何を読もうかなと迷った時に、つい他の薄い本に手が伸びてしまうというのもあった。
今回、本当は最新作の『ボタニストの殺人 上・下』を読みたかったのだが、せっかく2作目まで読んでるので、この際、順番通りに片付けちゃおうと思い『キュレーターの殺人』を読み始めたところ、おもしろおおおおい!やめられなくなってしまった。短い章立てでサクサク進むので昼休み、通勤電車、寝る前とキリをつけやすい。3作目にしてハマったわ。イギリスのカンブリア地方にも詳しくなるし。ポーの相棒の有能すぎるティリーさんは「アストリッドとラファエル 文書係の事件録」のアストリッド枠だね。今のところあと2作残っているのがうれしくってたまらない。
面白いミステリがある日々っていいもんですねえ。夕飯と入浴、歯磨きを済ませ、あとは寝るだけとなって布団に入り、ミステリの続きを読める喜びを嚙みしめている秋の夜長。これからうんと寒くなると布団から手を出すのが億劫になる。

僕の好きな文庫本(27)

つげ義春『貧困旅行記』(新潮文庫

カバー装画・つげ義春 デザイン・新潮社装幀室 解説・夏目房之介

スコーンと気持ちよく晴れた文化の日に御岳山に登ってきた。これが二度目となる。友人と近場でどっか行きたいねと話していて、夏に読んだ浅田次郎『完本 神坐す山の物語』が頭に残っていたので御岳山に決まった。登るといっても途中までケーブルカーを使い、30分ほど歩けば武蔵御嶽神社なのだが、ふだんの運動不足がたたり、それだけで息がはずんでしまった。バリ山行なんて絶対無理だ。下山後、御嶽駅の近くで蕎麦を食べ、心地よい疲れとともに帰路に就いた。
御岳山のことを知ったのは、つげ義春のこの文庫本でだった。読んですぐ御岳山に行きたくなり、その時行ったのがが初めて。他にも、大原・富浦や養老渓谷秋山村、「猫町紀行」の犬目宿など惹かれる場所がたくさん登場するが、一番気軽に行けるのが、立川から意外に近い奥多摩方面だった。つげ義春のこのしょぼい旅行記、なぜかたまに読みたくなるのだ。
今回の御岳山行でオオカミの護符をよく目にしたので、帰ってから小倉美惠子『オオカミの護符』を読み返している。

食のエッセイ

もう11月。今年もあと2ヶ月か。今日は職場でお昼の弁当が支給される日だった。いかなるときも私はうなぎ一択で、うなぎ!うなぎ!とうなぎコールをいくらしても、約1割いるうなぎ嫌いの同僚たちと折り合いがつかず、結局お高級なのり弁に。ふだん食べるホカ弁の3倍ほどの値段ののり弁を大変おいしく完食したが、よーし午後から仕事頑張るぞ!とは、全く、ならない。それとこれとは別だ。

カバンの中に食に関するエッセイ集が一冊入っていると安心である。疲れていてガッツリ集中して何かを読む気になれないときも、食のエッセイならなんとな~くページをめくって何ページか読んで一息つける。ここ数ヶ月は、そんなふうにして、平野紗季子『ショートケーキは背中から』、平松洋子『酔いどれ卵とワイン』、阿川佐和子『レシピの役には立ちません』、久住昌之『これ喰ってシメ!』、東海林さだお『カレーライスの丸かじり』(なんと最後の丸かじり)などをむしゃむしゃ読んできた。

今は、小山田浩子『小さい午餐』である。これはWEB「考える人」に連載されていたとき毎月すごく楽しみに読んでいたのに、内容をほとんど覚えていなかった。たった4~5年前のことなのに。
著者が「改行が多ければ多いほどいい、改行の際は1行空けたりするとなおよいとされているらしいWEBメディアの文章であるにもかかわらずあまり改行を入れない私の書き方のままで進めてもらえた」(p.5)と書いているように、パッと本を開くとほとんど改行がなく文字が端から端までみっちり詰まっている。改行だらけの東海林さだおがスフレだとしたら、小山田浩子の本はずっしり重たいシュトーレンのよう。一編読むと、次も読みたい、また次も読みたいとクセになり、軽く息抜きに読むはずだったこのエッセイ集に引き込まれ、ずいぶん夢中になって読み終えていた。食をテーマにした他のエッセイ集とは一味ちがう。むさしの若鶏むすびと呉のクリームパイ食べたい!

秋晴れの日曜日

仕事や生活のゴタゴタがいち段落した日曜日の遅く起きた朝、窓の外に爽やかな秋晴れが広がっていて気分がいい。毎年、日本シリーズがある頃の気候が一年でいちばん好きだと書いているが、今年は雨が続いたり急に寒かったり暑かったりでなかなか安定しなかった。たとえ安定しなくても夏の酷暑があまりにもつらかったので、涼しくなって身体が息を吹き返した感じがする。二の腕がスースーする感じが懐かしくて、もっとスースーさせたい。朝の温かい飲み物がおいしい。どんどん歩けて、歩いても汗で洋服がしっとりしない。ライトアウターを羽織り、程よい抜け感がカギの甘辛ミックス秋コーデ(どんなコーデや?)を楽しめる。

本もぐんぐん読める(気がする)。本は一年中コンスタントに読んでいるのだけれども、夏に比べると、1.2倍ぐらいの濃度で読める(気がする)。桜庭一樹『名探偵の有害性』、今日マチ子『きみのまち』、ブレイディみかこ『転がる珠玉のように』を読んだ。文庫新刊からは、眉村卓『その果てを知らず』を。自伝物が好きなので文庫帯の「自伝的遺作」という文句につられて読んだが、想像していたのとちょっと違った。