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ヨムヨムエブリデイ

姿勢をゆるめる

仕事から帰ると汗でドロドロで、シャワーを浴びて冷えた炭酸水をグビグビ飲むと生き返る。
『虎に翼』を見ていると、仕事から疲れて帰ってきたトラちゃんが、たいてい仕事で着ていたカチッとしたスーツ(しかもかなりタイトなやつ)のまま背筋をしゃんと伸ばし正座して夕飯を食べているのだが、それを見る度、『つくたべ』の春日さんが着てたようなスゥエットの上下に誰か着がえさせてあげて~と思ってしまう。トラちゃんの時代から約百年経ち、首周りの伸びたヨレヨレのTシャツにショートパンツで、新種の軟体動物かなんかのようにソファでぐにゃぐにゃしていられる。いい時代になったもんだ。

ぐにゃぐにゃしながらこんなん読んでた

片山洋次郎『姿勢をゆるめる』〈行儀が悪い姿勢には、メリットがある〉なんていう記述があり、まさにぐにゃぐにゃ冥利に尽きる。
江國香織『読んでばっか』書評や文庫解説ばかりを集めた本は正直途中で飽きちゃったりするのだが、これは一気にどんどん読んだ。江國香織×精興社書体だ。精興社書体の本を読むときは、脳の9割は内容、1割は書体にもっていかれる。このカーブ!とかこのハネ!とかこの微妙なヨレ!とか一文字一文字にいちいち惚れ惚れする。
『ミステリーツアー』『鬱の本』この時期いろんな媒体でサマーリーディング特集が組まれる。サマーリーディングといっても一年中読んでいるし、夏休みだってたった数日間しかないのだが、何を読もうかあれこれ計画するのが楽しい。NYTの選ぶ21世紀のベスト100冊なんて眺めているだけでわくわくする。『ミステリーツアー』は5人の小説家が面白いと思う本を15冊ずつ挙げている。『鬱の本』は夏葉社の『冬の本』にインスパイアされ製作されたそうで84人のおすすめ本が。またまた読みたい本が増えてしまった。供給に追いつかないよ。

あらゆることは今起こる

ここのところ続いた暑さと忙しさで早くもバテ気味になっていたのでこの2連休はありがたい。しかもこの数日天気はスッキリしないが涼しくて過ごしやすい。
2日目の今日は、用事でこちらに来る母と久しぶりに会う。昼前に待ち合わせて、昼飯にうな重を。おいしいねー、幸せだねーと言い合いながらペロリと平らげた。その後、母の買物に付きあう。母がジムで履いているシューズがくたびれてきたというので新しいのを買ってあげた。歩き疲れてカフェでお茶する。もうすぐ誕生日の私に好きなケーキを奢ってくれると言うので、もものケーキにする。しばしおしゃべり。日が暮れる前に解散。色々おいしくていい買物もできてよかったな。

母娘の確執というと、娯楽コンテンツになりがちだけれども、うちはわりと平和だ。まあ思春期の頃はちょっと荒れていたし、ママ愛してる!とハグするほどベッタリではないが、(昔わが家の女中兼召使だった)母が友人と気ままに旅行したり、楽しそうに日々暮らしているのを聞くとこちらも嬉しくなる。解散後、ボーナス記念(何でも記念にしたがる)に本を一冊買い、夜は何もしなくていいように弁当を買って帰った。

柴崎友香『あらゆることは今起こる』(医学書院)を興味深く読んだ。ADHDと診断された小説家が自分の内側で起こっていることを綴ったもの。少し前、やはり当事者の横道誠氏が、本屋大賞をとるような大衆文学は、感じ方が定型的ではない自分には難しくて理解できない、むしろ難解といわれる純文学のほうが単純でわかりやすいといっていて、そうなんだーとエンタメ好きの自分は思ったのだが、本書でも柴崎さんが同様のことを、ガルシア=マルケスの『族長の秋』を引用しながら説明していて、わー、そうなんやーと思った。

あと「スクリュー型の蓋が閉めにくい」ということ。自分の同僚にいつも蓋をきちんと閉めない人がいて、その度、「キッチリ閉めろや、フタ!湿気るじゃないか!」と(心の中で)イラッとするのだが、人それぞれできない事情があるんだとわかった。本書には、自分にも当てはまり、そうそうと思うところもある。知らない世界を知ると今まで見えていた世界が少し変わる。たまにでてくる柴崎さんの大阪弁がとてもよかった。

読んでばっか

選挙の投票日は、必ず午後8時キッカリにガッカリする日になってしまった。

月曜日。また一週間が始まる。ウェザーニュースの太陽のマークが凶暴な感じにギラギラしていて、予想気温の色が赤を通り越してこれまた凶悪な濃い紫色で、熱中症指数が最上級の「極めて危険」である外の世界へドアを開けて出て行かねばならない。今週は賞与の週なので、それだけを楽しみに耐えるしかない。

通勤のお伴はリカルド・アドルフォ『死んでから俺にはいろんなことがあった』(書肆侃侃房)。毎日新聞江國香織の書評につられた。その一部。
〈とてもいきのいい小説だった。つかまえたばかりの魚みたいで、読み終っても胸の内でつぴつぴ跳ねる〉
〈全編を通して一人称の、主人公の語りが冴えに冴えている。無骨で率直、ユーモラスで詩情豊か〉
つかみが上手いなあ。カオラーとしては、読まずにはいられないではないですか。今のところイラオモ―。
昼休み同僚とマスカット味のパピコを半分こして夏を演出。帰りに見かけた学生さんたちがそれぞれのマグボトルに入っている飲み物をおいしそうにごくごく飲んでいて、それ中身なにですか?何をそんなにおいしそうに飲んでるの?と訊きたくてしかたがなかった。

一年前

平日休み。朝食はトーストに昨日のポテサラの残りをのっけたのとコーヒー。掃除しただけで汗だくになる。昼に予約していた美容院で散髪。さっぱり短くしてもらい気持ちいい。帰り道が爽快。気持ちよくなって、今までどんだけ気持ち悪かったのかがわかる。『アンメット』の三瓶先生も髪短くしたらスッキリすると思う。終わったのが13時半で、ナポリタンのランチセットを頼む。ランチタイムの盛りを過ぎていたので空いていて、食後のアイスコーヒーを飲みながら本を読んでくつろぐ。その後、久々に大きい書店に。楽しい。あちこちの売場をのんびり見て、PR誌を色々もらった。

一年前のあなたはこんなの書いてたよというメールをはてなブログが定期的にサービスで送ってくるのだが、それを見るのが恥ずかしくてたまらない。そんな恥ずかしいのを日々垂れ流してるのは自分自身なのだけれども、時間が経てば経つほど恥ずかしさが増してゆく。今回も恥ずかしさを我慢して薄目を開けて流し見していたら、ちょうど一年前に、眠くて眠くてたまらないと書いているのが目に入り、もう毎年同じことの繰り返しだなと思った。

読んだ本、沢木耕太郎『心の窓』(『旅の窓』の続編。プロフェッショナルのインスタという感じ)。園部哲 『異邦人のロンドン』(講談社エッセイ賞がなくなったあとの唯一の楽しみである日本エッセイスト・クラブ賞の今年の受賞作)。井上荒野『錠剤F』(後味悪くて最高)。

焼酎に先を越された文庫


皆さんがそんなに『百年の孤独』がお好きだったとは! 出版社と書店のあまりの気合の入り具合、祭りっぷりにびっくりしてしまった。『アメリカの鱒釣り』が文庫化したときもざわついていたけれども、今回の方がさらに盛り上がっている感じ。今年の出版界最大の事件だ。文庫好きとしては、やっと焼酎に追いついて嬉しい限り。



元ネタはこちら。『中国行きのスロウ・ボート』の帯。消費税のない時代。80年代臭ぷんぷん。
今夏は、愛しあうことも忘れ『百年の孤独』を読みふけらねば。