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ヨムヨムエブリデイ

2024年の10冊

柴崎友香『続きと始まり』 高瀬隼子『うるさいこの音の全部』 金原ひとみナチュラルボーンチキン』 柴崎友香『あらゆることは今起こる』 永井玲衣『世界の適切な保存』 小山田浩子『小さい午餐』 花田菜々子『モヤ対談』 江國香織『読んでばっか』 『私の身体を生きる』 『うたわない女はいない』 おまけ・M・W・クレイヴンのワシントン・ポーシリーズ


『続きと始まり』年の初めに読み終えた早々に、今年の一冊はこれだと確信した。今もまだ終わらない続きの途中。
『うるさいこの音の全部』高瀬隼子の小説の登場人物の感じ悪さがとても好き。西村亨『自分以外全員他人』を読んだ際、高瀬さんの「いい子のあくび」を思い浮かべたのだが、二作目の『孤独への道は愛で敷き詰められている』の帯コメントを高瀬さんが書いていたので、繋がってる!と思った。同時期に読んだ小川哲『君が手にするはずだった黄金について』も感じ悪くて印象に残ってる。
ナチュラルボーンチキン』今年最後に読んだ小説。読み終えた勢いで10冊入り。こういうのは順番が後のほうが記憶が鮮明で有利だと思う。自分もルーティンゾンビなので、他人事ではなかった。
『あらゆることは今起こる』自分が読むのに大変苦労した『族長の秋』を、柴崎さんは読みやすくて一気に読んだと書いていて、一冊の本も人によってこんなに受け止め方が違うんだと思った。柴崎さんの小説の秘密がほんの少しわかった気がした。
『私の身体を生きる』タイトルと執筆陣を見て、また流行りのアレ系の本かーと思っていたら、とんでもなかった。読む前に萎えなくてよかった。
『うたわない女はいない』句集や歌集を読むのは苦手だが、句や歌+エッセイ形式の本は好きだ。労働短歌+エッセイ。良い企画。
おまけのワシントン・ポーシリーズ ずいぶん遅れてこのシリーズにハマり、今年後半、キュレーター→グレイラット→ボタニストと分厚い本を読むのが至福のひとときだった。やっと追いついたよ。


年末、いろんな媒体でプロが選ぶ「今年の3冊」といった特集が組まれます。新刊が中心で、それに飽きてきたころに、個人がSNSでそれぞれのベスト10冊のリストを挙げてくるのですが、これを眺めるのがとても面白い。古いの新しいの、翻訳物、エンタメ、ミステリ、SF、ノンフィクションなどおかまいなくやりたい放題というか選びたい放題で、自由過ぎてうれしくなります。本が読まれなくなったと定期的に話題にされますが、本を好きな人ってこんなにいるんだと毎年そのリストを見ながら思います。なかでも、古典やかなり前の話題作などをマイペースで粛々と読んでいる人に惹かれます。私は、情報に踊らされてつい新刊に手が伸びちゃうのですが、もっとマイペースに楽しんでいけたらなと思っています。来年はどんな本に会えるのでしょうか。平穏に本を読める日々がずっと続くことを願っています。

ナチュラルボーンチキンとケーキ

今日のオレのしょぼ昼めし

とにかく忙しい。年末は毎年忙しいものだが、今年はさらに色々重なって最悪。丁寧に切っとる時間なんかないわといわんばかりに雑にカットされたケーキが、これまた雑にラップに包まれてお昼に配給された。持参のおむすびとともに5分でたいらげる。情緒も何もないが、大変大変!と言いながら、ケーキ手づかみみたいなこのワイルドな状況をみんな楽しんでいるようにも見える。今、金原ひとみの『ナチュラルボーンチキン』を読んでる途中で、ケーキとチキンが揃ったなと思った。

11月下旬のミステリのランキング発表で幕を開けた今年のベスト本の特集は、その後、本の雑誌/毎日新聞/週間読書人/図書新聞/北海道新聞/読売新聞など休みなく続き、まだ朝日新聞やベストホラー2024、鴻巣友季子さんのおすすめ記事が残っているが、もうお腹パンパン。毎年こうなる。でも、それらを眺めながら読みたい本をメモして書店や図書館に行くのがとっても楽しい。え、そんな本出てたの?というのを知れるのがいい。

くたびれた仕事終わりに最寄りの図書館に寄り、石井美保『裏庭のまぼろし』、上野千鶴子『マイナーノートで』、朴沙羅『ヘルシンキ 生活の練習はつづく』、尾八原ジュージのホラー小説、「本の雑誌」の私のベスト3でクラフト・エヴィング商會が紹介していた内田樹『図書館には人がいないほうがいい』などを借りた帰りはホックホクで足取りも軽い。寒さも気にならない。

クリスマスが終わり大晦日までの色のない静かな時間が好きだ。年賀状も投函し終え、仕事以外は配信ドラマと読書三昧。

さしすせそ

気がかりだった会社全体の忘年会がやっと終わった。 
くじ引きで決まった席が、苦手なおっさん上司の隣で(くじ運悪し!)、その人が、新しい料理やワインが運ばれてくるたび、それについてのうんちくを傾けまくり、僕はどこの何しか食べないとか、うーんこれはまあまあだな、これは食えないこともないな(結局自慢)とか言うのでイライラさせられた。無視するわけにもいかず、例によって無表情で「さしすせその法則」(「さ」=さすがですね!「し」=知らなかった!「す」=すごいですね!「せ」=センスいいですね!「そ」=そうなんですか!)で対処。でも、なんでいつもいつもブラタモリ的シチュエーションに「さしすせそ」で対応しないといけないのか。その話ぜんっぜん興味ないんですけどー、と言えたらどんなにいいだろう。
この間読んだ、ジェーン・スー中野信子『女らしさは誰のため?』(小学館新書)に、

過度な自信を持つ人、自分という存在には何らかの意義があると説明したがっている人も、褒めそやしである程度コントロールすることができます。女が表立って裁量権を持てない場面で「男を手のひらで転がせ」と言われるのはそういうことでしょう。(p.161)

とあって、あ、これなんだろうなと思った。コントロールしようとまでは思ってないが、その場を無難に切り抜けるために、これまでの人生で身についた手法なのだ。
そんなこんなで大変にくたびれた帰り道のイルミネーションがとてもきれいだった。布団の中で読み始めた、津村記久子さんの会社員小説が沁みた。

でかい風呂

舞台袖でスタンバイしている本たち

ひさびさの休み。そしてボーナス支給日。師走に入り忙しさが加速し、肩がゴリゴリ凝ってるのでスーパー銭湯に行くことにする。湯船で思い切り手足を伸ばせるのが最高だ。ジェットバス、露天風呂、サウナ、すべての風呂を満喫して心身ともにあったまって出るころには、解凍されてふにゃふにゃに。あー、気持ちいい。寒い日の銭湯はいいね。風呂上がりに炭酸水をグビグビ飲んで、髪を乾かし、身体を冷ますあいだ、月村了衛『虚の伽藍』を読む。中瀬ゆかり親方激オシ本。昨夜からふと読み始めたら止まらなくなってしまった。『半暮刻』も面白かったー。
冷たい風を心地よく感じる帰り道、お寿司とショートケーキを買い、TVerで配信された『すいか』をだらだら見ながら食べる。『虚の伽藍』の続きも読まねば! メシはうまいし本は面白いし身体はホカホカで言うことなしの休日。
だったのだが、明日は憂鬱な職場の忘年会。絶頂からどん底へ。

待合室でミステリ

たて続けに仕事関係の葬儀があったり、友人が事故で緊急入院して、仕事終わりや休日に付き添ったりしていたら、あっという間に11月後半が過ぎ、12月になっていた。
友人はしきりに、すまない申し訳ないというのだが、付き添いは、ずっと本を読んでいられるから全然大変じゃない。検査や処置待ちの時間に、日当たりの良い喫茶コーナーで、ご自由にどうぞと書かれたコーヒーや紅茶を啜りながら、サイモン・モックラー『極夜の灰』や、陸秋槎『喪服の似合う少女』を読んだのはとてもいい時間だったな、と思えるのも、自分が痛い苦しいつらいの当事者ではないからだけれども。
ちょうど「ミステリマガジン」で今年のミステリランキングが出たばかりで読みたい本が渋滞している。こういったアンケート集計型のランキングの楽しみは、ガッツリ上位に食い込む鉄板ものより、少数の人しか選んでいない下位の地味な作品を見つけて読むことだ。
今日は、金曜日に退院したばかりの友人と買物に。味の濃いジャンクなものを無性に食べたいというので、ラーメンと餃子を食べ、おやつにたこ焼きを。いろいろ一段落して一安心。どうか師走は穏やかに過ごせますように。