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ヨムヨムエブリデイ

ブレーキランプ5回点滅

木曜日。平日の休日。アラームかけずにぐっすり眠る。

ハルキムラカミの本を読んでいて好きだと思うのは、こんなところ。

 僕はアパートの駐車場から廃車寸前のフォルクスワーゲンを出してスーパー・マーケットにでかけ、キャットフード缶を一ダースと猫の便所用の砂と、旅行用の髭剃りセットと下着を買った。(中略)駅の近くに旅行代理店があったので、そこで翌日の札幌行きの飛行機を二席予約した。それから駅ビルに入ってキャンバス地の肩にかける旅行かばんとレイン・ハットを買った。(中略)そしてガソリン・スタンドで給油とオイル交換をやってもらっているあいだに近所の本屋に入って文庫本を三冊買った。  『羊をめぐる冒険』より

こんな感じにサクサクッとした一日を過ごしたい。先週ひさびさにドライブしていたら、信号で後ろに停車した車の運転手(強面の60代ぐらいの男性)が降りてきて窓をコツコツたたいた。なになに?文句言われる?やばいやばいやばいこわいこわいこわいとビビりつつウィンドウを少し下げると、「右側のブレーキランプが切れてるよ」と教えてくれた。信号待ちでわざわざ降りてきて教えてくれるなんて親切な人はいるものなんだなあ。後ろのライトは人に言われないと気付かないので、とてもありがたかった。それで今日の一番のタスクはブレーキランプの修理だ。

朝昼兼の朝食を済ませ、駐車場から車を出し、まずカーショップへ行きブレーキランプを交換。ガソリンスタンドでガソリンを補給し、黄砂にまみれた車体を軽く洗車。私の洗車ソングは、ユーミンの「夕涼み」だ。それから野菜を育てている友人宅へよばれ、スナップエンドウ、ニラ、じゃがいもをもらい、少しドライブしてから帰宅。早めに入浴し、プレバトを見ながら夕飯。ニラ玉、スナップエンドウを焼いたのなど。新鮮でおいしい。平松洋子『ルポ 筋肉と脂肪 アスリートに訊け』を読む。面白い。筋トレしたくなる。安達茉莉子『臆病者の自転車生活』を読んだときは、自転車に乗りたくなったし、すぐ影響されてしまう。

つれづれノート

今週の楽しみは、夜帰ってから1日1話ずつ見る『アストリッドとラファエル 文書係の事件録』と、メイ・サートン『終盤戦 79歳の日記』(みすず書房)だった。アストリッドとラファエルは、漢方でいったら実証タイプのラファエルと虚証タイプのアストリッドのコンビがよくてハマった。『終盤戦 79歳の日記』は、メイ・サートンの8冊ある日記シリーズのうちの6冊目で、翻訳されるのは7冊目。タイミングよく、ちょうど5月から始まっている。

  • Journal of a Solitude (1973)→『独り居の日記』
  • The House by the Sea (1977)→『海辺の家』
  • Recovering: A Journal (1980)→『回復まで』
  • At Seventy: A Journal (1984)→『70歳の日記』
  • After the Stroke (1988)→『74歳の日記』
  • Endgame: A Journal of the Seventy-Ninth Year (1992)→『終盤戦79歳の日記』
  • Encore: A Journal of the Eightieth Year (1993) 未訳
  • At Eighty-Two (1996)→『82歳の日記』

最後の『82歳の日記』を先に読んでいるので、武田百合子の『富士日記』上・中・下の下巻を先に読んじゃったような感じだが、それ以外は順番に読んできた。残すはあと1冊(80歳の日記)のみ。また何年か後に読めるかな。


作家を作った言葉〔第17回〕滝口悠生 | 小説丸に、滝口悠生さんが、銀色夏生つれづれノート』について書いている。小学生の頃に『つれづれノート』を読み、本に書かれた他人の言葉に共感するという経験を初めてしたという話。え、滝口悠生銀色夏生を?と意外だった。滝口さんは『つれづれノート』シリーズをもう久しく手にしてはいないそうだが、私はまだしつこく新刊がでたら読み続けている。子供の頃から30年ぐらい。途中で嫌になったり、最近は「新しいこと始めてもどうせすぐ飽きちゃうんでしょ」とか「また庭の話かよ!」とか読んでいてイライラすることの方が多いのだけれど、そういうのも含めて続く限り読み続けるんじゃないかと思う。

ネネさん

GW前と、連休谷間の出勤日と、連休明けの忙しさが落ち着いて、いつものルーティンがやっと戻ってきた。ルーティン好き。昼休みに持参したおにぎりを食べ、みんなのお土産のお菓子をつまみながら本を読める愉快な30分も戻ってきた。

連休中から手を付けていた津村記久子『水車小屋のネネ』を読み終える。通勤や仕事の合間に少しずつ読むのがひたすら楽しい一冊だった。話の始まりは、先月読んだ『黄色い家』とよく似ている。母子家庭に暮らす少女が、母親の彼氏や婚約者から、お金を盗まれたり暴力を振るわれたり酷い目にあわされ、たまらず家を出る。そこから出発し、『黄色い家』には、カード詐欺とかシノギとかヤバい方へ転がっていく90年代が、『水車小屋のネネ』には、周囲の人々の小さな善意に支えられ、また支えもしながら堅実に年を重ねていく40年が描かれる。ほぼ同世代の二人の作家が同時期に新聞に連載した小説を読めて本当によかった。もう腹パンパンである。いや腹ではなくて、脳パンパンというか心パンパンというか、とにかく本を読むのっていいものだといつも思っていることをまた思っている。さて、次は何を読もっかなー。

SISTERS IN YELLOW

昨日から一泊二日で箱根温泉に行ってきた。ちょっと早い母の日のプレゼント。宿の近くを散策し、昼、夜、朝と風呂に浸かりゆっくり過ごす。料理もおいしかった。嫁いだ家での、女中、家政婦、召使、奴隷、さらに言うと家畜時代を子供のころからずっと見てきたので、そんな母が、自分ファーストで楽しんでいるのを見るのがとても嬉しい。これからももっといろいろ楽しんで。現地解散して19時過ぎに帰宅。夕ごはんは、買ってきたシウマイ弁当。食後に苺とアイスクリーム。

先週読み終えた川上未映子『黄色い家』の余韻がまだ続いている。帯に「世界中から翻訳オファー殺到!」とあるので、英訳される時には、タイトルは表紙にある通り、SISTERS IN YELLOWになるのだろうか。SISTERS IN YELLOWは、『黄色い家』にはない微妙なニュアンスも含んでいていいタイトルだと思う。シスターズ(花、蘭、桃子、そして黄美子さん、琴美さんも入れたい)みんなが愛しい。シスターではないけれど、映水(ヨンス)さんも。カバーを外すと現れる黄色がまたかっこいい。装幀は名久井直子さん。名久井さん何人いるんだ。

クールダウンするため、『村田喜代子の本よみ講座』(中央公論新社)、三浦しをん『好きになってしまいました。』(大和書房)を読んだ。

新聞小説

長い(分厚い)長編小説は、寒い冬の夜の風呂と同じで、フタを開けて中に入るまでが億劫で、なるべく先延ばしにしたくていつまでもグズグズしているものだが、いったん入ってしまえば、ああ、こんなにいいものだったんだ、やっぱ入ってよかったなあと、ついさっきまで死ぬほど億劫がっていた自分のことなんかすっかり忘れてしまう。というようなことを、漸くページを開いた川上未映子の『黄色い家』を読みながら考える。

『黄色い家』は読売新聞に連載(2021.7.24~2022.10.20)された新聞小説。やはり、フタを開けられるのを待っている津村記久子の『水車小屋のネネ』はちょうど同じ時期(2021.7.1~2022.7.8)に毎日新聞に連載されたもの。新聞小説は、始まってしばらくは毎日楽しみに追いかけて読むのだけれども、忙しかったりで間が空いてしまうと、ああもういいや、単行本になってから読もうとあっさり路線変更するのがほとんどだ。

ここ何年かで読んだ新聞小説の本では、松浦寿輝『無月の譜』(毎日)、阿部和重『ブラック・チェンバー・ミュージック』(毎日)、中島京子『やさしい猫』(読売)、角田光代『タラント』(読売)、島田雅彦パンとサーカス』(東京)、平野啓一郎『本心』(東京)、山田詠美『つみびと』(日経)などが特に印象に残っている。

『黄色い家』を開き、これを毎朝届く新聞でちょこっとずつ読んでいた人たちってどんなにやきもきしてただろうなと思ったりする。自分は先へ先へとどんどんページを繰りながら。夜、仕事からヨレヨレになって帰ってきて、風呂に入ったあと、韓ドラを一話見て、眠るまで本の続きを読むのが楽しみでたまらない。