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ヨムヨムエブリデイ

2023年の10冊

川上未映子『黄色い家』/津村記久子『水車小屋のネネ』/阿部和重シンセミア』/阿部和重『オーガ(ニ)ズム』/パク・ソルメ『未来散歩練習』/ク・ビョンモ『破果』/斎藤真理子『本の栞にぶら下がる』/西加奈子『くもをさがす』/キム・ホンビ『多情所感』/小野寺史宜『銀座に住むのはまだ早い』


『黄色い家』『水車小屋のネネ』は2023年の私のツートップ。未映子さんのエッセイ集『深く、しっかり息をして』もよかった。谷崎賞授賞式で津村さんが着ていた11ぴきのねこのシャツが可愛かった。さすがに授賞式はバンドTシャツじゃないんですね。シンセミア2003年に刊行された本を20年後にようやく読めて満足。今夏の異常な暑さとともに記憶に刻まれた。『オーガ(ニ)ズム』文庫化された分厚い上下本を読んでいる2週間がとても楽しかった。『未来散歩練習』はじめはとっつきにくかったが不思議とクセになる読み味で読みながら頭の中でぐるぐる色んなことを考えさせられた。いい時間だった。『破果』小道具の「錠剤」がガツンと効いていた。『本の栞にぶら下がる』この本にはぶら下がる栞紐(スピン)が付いていない。その代わりというのか、裏表紙にちょっとした仕掛けがあって、その仕掛けをつい指でつまみそうになる。くぼたのぞみとの往復書簡『曇る眼鏡を拭きながら』もよかった。いま脂ノリノリの斎藤さんの「ちくま」の新連載も楽しみ。『くもをさがす』日本とカナダの医療システムの違いが興味深かった。一番深刻なはずの手術の場面でのツッコミの連打に一番笑わせられた。西加奈子のサービス精神に脱帽。『多情所感』読みながら何度膝を打ったことか。『銀座に住むのはまだ早い』家賃5万以下の物件に住むと仮定して東京のいろんな町をめぐるエッセイ。グーグルマップ片手に読んだ。図書館に寄り、公園を歩き、ランチを食べ、最後に喫茶店で美味しいコーヒーを飲んで帰る。こんな散歩したいなあ。


以上、思いついたままに。私は本に何も求めていなくて、読んでる数時間、数日間が楽しければただそれだけでいいです。おいしいものを食べて本を読んでいられれば、いつも上機嫌。柴崎さんの新刊もまだ読んでいないけれど、『シンセミア』なんか20年も待っててくれたんだから大丈夫。来年どんな本に出合えるのか楽しみです。では、(希望を込めて)良いお年をお迎えください。

なんてことない 아무것도 아니야

昨日は仕事納め。お昼に、今年もお疲れ~ごくろうさんとチーム長からうな重の支給あり。飲める鰻。12月は尋常でない忙しさだった。もうヨレヨレである。何はともあれ無事終了した。今日は一日骨休めして明日帰省の予定。こちらでずっとのんびりしていたいがそうもいかない。

今月初めエアコンの工事があったおかげで、ベランダや窓ガラスもきれいにして部屋も片付けたので、それが大掃除になってよかった。年賀状も年々縮小していってる。仕事関係の人は年賀状を遠慮しましょうという取り決めが普及し、親しい友人はLINEだし、あとは年賀状を出したい人だけになったので、年賀状に対する義務感がなくなり楽しく書き終えた。色々なことがだんだんシンプルになっていく。いいことだ。

11月下旬のミステリーランキングから始まった今年のベスト特集も新聞、雑誌、WEBなど様々な媒体でおおかた出尽くし(もう満腹!)、鴻巣友季子さんの2023年のおすすめ小説と、朝宮運河さんによるベストホラー2023が発表されたら、いよいよ暮れも押し迫ったなという感じだ。

海の向こうでは戦争が行われ、国内はどうしようもなくゴタゴタしているが、個人的にはいい一年だった。仕事は大嫌いだが、その代償として給料が支払われ、それで好きなものを食べて買って本を読んで楽しく生活していけるのだから、満足している。これ以上望むものはない。今楽しみなのは、コタツにもぐってアイスを食べながらの読書。さあ、次は何を読もうかな。

象か虎か

ひょんなことから親しくなった一人暮らしの老婦人Nさんから、たまーにメールや電話をいただくのだが、炊飯器が壊れちゃったから新しいのを買いに行かないといけないというのを聞いて、じゃあ21日仕事が休みなので一緒に行きましょうか? わあ、助かるわ~となって、今日の11時に待ち合わせて、家電量販店へ。
1万から10万円を軽く超えるのまでピンキリで、優柔不断の自分だったらとても選べないわ、地獄だ。店員さんに「象印とタイガーはどっちがいいのですか?」と訊くと「炊飯器を買われる方は100パーそれ訊きますね」とのこと。Nさんは、広告を見てだいたい目星をつけていたようで、わりとスムーズにミドルクラスのに決まる。持ち帰り特価なので、ダイジョブ持てます持てますと言ったはいいけれど、箱はでかいし重かった。その後、Nさん行きつけの蕎麦屋で、Nさんは鴨南蛮、私は天ざるを食べる。おいしい! こないだボーナスが出たばかりだから今日はご馳走しますよと言ったけれど、聞き入れてもらえなかった。家まで炊飯器を送り届け、郵便局で年賀状を買い、スーパー、本屋といつものコースで帰宅。コートを着てキーンと冷えた年末の町を歩くのは気持ちがいい。

穂村弘『蛸足ノート』、上野千鶴子『八ケ岳南麓から』、服部文祥北海道犬旅サバイバル』、堀本裕樹『才人と俳人 俳句交換句ッ記』を読んだ。忙しいのでサクサク読めるものばかり。コタツに入ってアイスを食べながら、ホラーやミステリも読みたい。

僕の好きな文庫本(25)

スティーヴン・キング死のロングウォーク』(沼尻素子訳、扶桑社ミステリー)

カバーデザイン・コガワミチヒロ イラストレーション・鏡泰裕 解説・奥澤成樹

「読んでから見るか、見てから読むか」は、1977年に公開された角川映画人間の証明』のキャッチコピーで、角川春樹が考えたものだそうだ。私はできれば読んでから見たい派だ。読んでる間、勝手にあれこれ脳内キャスティングをするのが楽しくてしょうがないから。見てから読むと、どうしてもその俳優の顔しか浮かばなくなってしまう。シャーロック・ホームズはジェレミー・ブレット(声は露口茂)だし、つぐみは牧瀬里穂で、風間教官は木村拓哉で、シロさんは西島秀俊だ。

本書『死のロングウォーク』は、1979年にリチャード・バックマン名義で出版された。キングの初めての小説といわれている。100人の少年が集められ、ひたすら南へ歩くだけという競技が行われる。この競技にはゴールはなく、歩行速度が落ちたものから射殺され、最後の一人になるまで続く。『バトル・ロワイアル』や『イカゲーム』に通じるものがある。先日『死のロングウォーク』の映画化が進行しているというニュースを見た。何度も映画化が話題になり実現しなかったが今度はどうなるのだろう。どちらにしても、先に読んでいるので安心だ。

しぶとい忘年会

コロナで廃れたかと思っていた忘年会が4年ぶりに復活、昨夜行われた。4年の間に職場全体の人がずいぶん入れ替わったので、顔合わせのためなるべく出席せよとのお達しによりしぶしぶ出席。席はくじ引きで、隣になったおっさんの(大昔の)学歴自慢や(大昔の)武勇伝を延々と聞かされる。何でそんな話を聞きたい人がいると思うのだろうか。1ミリも興味がないが、こういう時は「さしすせその法則」でやり過ごす。(「さ=さすがですね!」「し=知らなかった!」「す=すごいですね!」「せ=センスいいですね!」「そ=そうなんですか!」)で右から左に流しながら、高級な料理をしっかり平らげて、一次会でサクッと退場。ビンゴで千円のQUOカードが当たった。

今日は昨日の疲れもありゆっくり起きる。暖かく穏やかな一日。コタツに入ってコーヒー飲んだり、おやつを食べたり、動画を見たり、本を読んだり、うとうとしたり、ああ、いい日曜日だ。寝転がって窓から見上げる空は快晴。
伊澤理江『黒い海 船は突然、深海へ消えた』を読んだ。本田靖春ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞、さらに日本エッセイスト・クラブ賞まで受賞したこの本をようやく開く。午前中から読み始めて一気に読んでしまった。