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ヨムヨムエブリデイ

納豆二パックの人

ネット上の日記を読むことは多いけれど、雑誌などに連載されている日記で欠かさずチェックするのは、東京人の川本三郎「東京つれづれ日誌」(正確には日記ではないが)と、本の雑誌西村賢太「一私小説書きの日乗」ぐらいだろうか。「一私小説書きの日乗」の何が楽しみかといって、氏が明け方に執筆を終えた後、晩酌し(メニューがまたいい、ウインナーのウスターソース炒めとか)、白飯代わりの納豆二パックで〆るところ。この「納豆二パック」が出ると、キタ━!とひとり喜ぶ。キラーフレーズだ。今月号は、タイトルに添えられている沢野ひとしのイラストにも納豆二パックの人が登場していて笑った。サーノさんも「納豆二パック」ファンなのだ、きっと。それへのサービスなのかわからないが、いつもは2~3回しか出てこないのに、今月号は前半から「納豆二パック」の連打。冷蔵庫にどんだけ納豆入ってるのか。さらに後半、とうとう「納豆一パック」まで飛び出してきて、一パックの選択肢もあるんだーと驚く。毎回「納豆二パック」に気をとられて、肝心の内容があまり頭に入ってこないのだが、それも含めて楽しみな日記。あと奇抜なファッションの編集者の清水氏も気になる。

さぶさぶ~と帰ってきて、こたつに入り、録画していたあさイチ山本文緒を見ながら夕飯。亡くなった編集者の木村由花さんのところで、こちらまで胸がいっぱいになる。作家の書斎が映るとやはり本棚に並んでいる本の背表紙に目がいっちゃう。
食後にりんごを剥く。りんごを食べると、昔、リンボウ先生のエッセイで読んだコックスという種類のりんごを思い出すのだが、まだ食べたことがない。
小池昌代『かきがら』(幻戯書房)、奥泉光『死神の棋譜』(新潮社)を読んだ。

大人はいいコーヒーを飲む

毎年この時期になると憂鬱のたねの職場の忘年会が今年はすべて中止。ありがたいことだ。その代わり、昨日のランチにボス(韓国ドラマ風に言うとチーム長)が出前を振る舞ってくれた。私は、鰻重一択だったのだが、鰻苦手という人がいて、じゃあ寿司はどうだと提案する人がいれば、生魚苦手という人がいてなかなか決まらず、結局老舗とんかつ屋のとんかつ弁当になった。ヒレかつがとてもやわらかく、歯がいらなかった。くちびるであむあむ噛んだ。

11月下旬に、ミステリのランキングが出始め(ミステリマガジン、このミス、週刊文春)、ダ・ヴィンチ本の雑誌週刊読書人図書新聞毎日新聞などが続々と今年のアンケート特集を組んでくるこの10日間ぐらいが一番わくわくして楽しい。荒川洋治光文社古典新訳文庫好きだなーとか。それを過ぎると、もう腹パンパンで倦怠期の夫婦のように醒めてトキメかなくなってしまうのはいつものこと。あーまたですかって。でも毎年、街頭のイルミネーションみたいにキラキラした10日間余りを過ごせるのは、本好きの醍醐味だと思う。

長嶋有『今も未来も変わらない』(中央公論新社)を読んだ。細部がいちいちよくって、読んでる間ずーっと楽しかった。はーよかったなと名残惜しく後ろの見返しを開くと、カバーのそでの部分にマスク姿の著者近影がある。それだけでこの本はコロナ後に出版されたことがわかる。帽子に眼鏡にマスクと、以前だったらかなり怪しい出で立ちの長嶋氏だが、違和感がなくて、コロナは怪しさを薄めてしまうのだと思った。
他に、冨原眞弓『ミンネのかけら―ムーミン谷へとつづく道』、村井理子『兄の終い』『村井さんちの生活』を読んだ。韓国ドラマを見だすとキリがないので1日2話までと決めている。

佐和子?

12月になってしまった。ひさびさの雨。早出の早帰りだったので仕事終わりに本屋をぶらぶら。冬の雨と紙の混じった匂いを浴びて、仕事の疲れがとれる。

岸本佐知子『死ぬまでに行きたい海』(スイッチ・パブリッシング)が積まれている。待ってたよ。大好きな連載で、このブログでも、好き好き好き好き言っていて、「MONKEY」で真っ先に読むページだった。林真理子が「ananを後ろから開かせる女」と呼ばれている(今でもそうなのかしら)が、岸本佐知子は「MONKEYを後ろ(のほう)から開かせる女」だ。ちくまの連載「ネにもつタイプ」のみっちりギンギン面白いでしょ?の感じよりも、こちらのほうが好み。裏佐知子といったらいいのか。なかなか単行本にならないので、死ぬまでに単行本化しない連載ではないかと心配していた。喜ばしい。

文庫のコーナーに行くと、堀江敏幸角田光代『私的読食録』が。プレジデント社から新潮文庫入り。今でも「dancyu」で続いている楽しみなご長寿連載。単行本を読んだが、こういう本こそ文庫で読みたいと思う。あと「dancyu」では、「のむよむ。」も好きなリレー連載。で、『私的読食録』だが、共著の場合、新潮文庫の背表紙は何色になるのか刊行前から興味津々だった。堀江敏幸はうすいグレーで、角田光代はグリーン。さて、『私的読食録』は何色だったでしょうか?
えー、角田さん、いいの?と思ってしまった。年上を立てる、って感じ? 川上未映子村上春樹『みみずくは黄昏に飛びたつ』も共著だけど、これは偶然なのか意図的なのかわからないが、二人とも同じ色の背表紙なので問題なかった。

マックでグラコロとポテトをテイクアウトして、本を抱えて、寒いけどホクホクしながら帰った。マクドナルドをお題に、私的読食録するとしたら、村上春樹の「パン屋再襲撃」かな。あれは、グラコロではなくて、ビッグマックだったけれども。

Kの沼

楽しみにしていた連休が、本当に「あっ」という間に終わってしまった。連休明けでくたくた。おまけに贔屓のチームは、勝てる気がまったくしない。

昨日から読んでいた、チョン・イヒョン『優しい暴力の時代』(斎藤真理子訳)がよかった。同題の短編集全訳に加えて、訳者の意向でボーナストラックとして最後に収録されている「三豊百貨店」を読み終え、しばらく余韻に浸る。

韓国文学、知れば知るほど面白い。「すばる」12月号に、都甲幸治が、チョン・セランの『アンダー、サンダー、テンダー』との出会いは事件だった、と書いている。私の事件は、パク・ミンギュの『カステラ』だった。韓国文学には知識も興味もなかったが、第1回日本翻訳大賞受賞作のこれを、どれどれとりあえず読んでみっかと手にとったのが始まり。それから『ピンポン』『ダブル短篇集サイドA/B 』などを読み、チェ・ウニョンの『ショウコの微笑』がやたらよかったので『わたしに無害なひと』を読み、イ・ギホ『誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ』をたいそう気に入ったので、『原州通信』『舎弟たちの世界史』を読んだ。チョン・セランもハン・ガンもグロいピョン・ヘヨンも韓国の村上春樹と言われているキム・ヨンスも読んで読んで読みまくった。さらに(困ったことに)、韓国映画とドラマにまでハマってしまう。帰りのホームルームが終わり、みんなが帰り支度をしている頃に登校したような遅れっぷりだから、追いつくためにどんどん見てる。楽しい。時間ドロボー。
本棚を眺めていたら、関川夏央『ソウルの練習問題』が目にとまり、なんとなく読み始める。集英社文庫の新装版ではなく、古い新潮文庫版。赤瀬川原平宮村優子のW解説。1980年代前半の韓国のルポルタージュだが、この間読んだ『舎弟たちの世界史』と同じ時代だった。周辺知識が増えるにつれて、点と点がつながっていくのが面白い。

ガッポン

平日の休日。いい天気。冬用の毛布など干す。
第何次、いや第何十次かのホットサンドマイブームがきていて、毎朝、薄切りの食パンに具を挟み、ホットサンドメーカーで焼いている。先週は、今日こそは米大統領決まっただろうと朝起きて、でも(更新機能がちゃんと有効なのか不安になってしまうほど)数日間まったく数字に変化がない青と赤のグラフを見ながら、パンに色んな具が挟まれた。ポテサラの残り、ベーコンエッグ、カレーの残り、ハムとチーズ。パンニハムハサムニダ。今朝は、ツナマヨと玉ねぎスライス。とてもおいしい。

昼すぎ出かけ、銀行、郵便局、本屋を巡る。紅葉が進んでいる。ランチタイムのピークがすぎた店で、アジフライ定食を頼む。ハリネズミみたいな衣がサクサクでおいしい。何を食べてもおいしくて大丈夫だろうか。ブックオフ、スーパーに寄り、ケーキ屋でモンブランとアップルパイを買って帰る。

柴崎友香『百年と一日』、松田青子『持続可能な魂の利用』、吉田篤弘『奇妙な星のおかしな街で』を読み終え、今日は阿部和重伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト 新装版』(新潮文庫nex)を携帯して銀行やランチの待ち時間に読む。するする進む。何で今頃?だけど、三年前に上下二分冊で文春文庫に入ったのが再び一冊に合本したこの機会に。『蜜蜂と遠雷』や『雪の階』は文庫化されて上下に分かれ、おそらく今は分かれるほうが多いようなので、逆合本は得した感じ。
三冊分を合本した北村薫『詩歌の待ち伏せ』(ちくま文庫)は個人的に今年の合本大賞をあげたい。かなり前になるけれど、やはり三冊分を合本した安岡章太郎の『僕の昭和史』(新潮文庫、のち講談社文芸文庫)も嬉しい合本だった。

昼が揚げ物だったので夜は簡単に親子丼。食後にモンブランとコーヒー。休日はあっという間に終わってしまう。明日の朝は、何を挟もう。