y o m u : n e l

ヨムヨムエブリデイ

車にまつわるエトセトラ

生憎の曇天だが、友人とドライブに行く。もうエアコンを付けなくても、開けた窓から入ってくる風が気持ちの良い、いい季節になった。高速には乗らず、一般道をトロトロ走って海まで。海を眺めながら車に積んでいるコンロでコーヒーを入れて飲む。ラーメンや簡単なものも作れるが、後片付けが面倒なので、途中の店で各自買ってきたサンドイッチやおにぎりなどを頬張る。ドライブは楽しい。

  • あおり運転の取り締まりが厳しくなったが、気を付けなくてはならない。自分は、ウィンカーを付けずに強引に割り込まれたり、無理な追い越しなどをされるとすぐにキレてしまい「追い抜かれたら追い抜き返せ!」と抑制が効かなくなってしまうのだ。ハンドルを握ると人が変わるとよく言われるが、もともとの性格がこっちなのだろう。その点、友人は運転がすごく上手いのに追い越されようと割り込まれようと平然としている。「悔しくないの?仕返ししろ!」と息巻く私に「行きたいやつには行かせとけばいいよ。もしかしたら大切な人が危篤で病院に急いでいるところかもしれないじゃない」とひょうひょうとしている。私もこうなりたい(なれないわ)。
  • おぎやはぎの愛車遍歴」が好きで楽しみにしている。有名人がこれまでの車遍歴や車への愛について語る番組で、さすがに芸能人はいい車に乗ってんなーと感心しながら見ている。
  • 昔、トヨタ・コロナという車種があった。近所のおじさんがよく乗っていて、タクシーにも使われていたが、今もあるのだろうかとふと思った。もしあったら新型コロナ発売とかなるのだろうか。しかし検索したら2001年にとっくに生産終了。そんなところに「&Premium」10月号の「車とわたし」のコーナーにトヨタ・コロナに乗っている女性が登場していてタイムリーだと思った。
  • 本の雑誌速水健朗「モーター文学のススメ」は車好きには楽しい連載。最近自分が読んだ本のなかでは、しまおまほ『スーベニア』にでてくる恋人との夜のドライブが印象的だった。主人公の女友達が乗っている白いラシーンもチラッと登場する。白いラシーンといったらすぐに長嶋有を連想するが、氏のブログ「ムシバム」を読んでいるとまだ愛車にしているようだ。走行距離が111111kmに到達したとあった。

ラシーンのためのMV。これ、車の内装とかに気をとられて、曲が全然頭に入ってこない。
醒まそう醒まそう。

cero / Summer Soul【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

パワフルな絶望

f:id:yomunel:20200919205445j:plain:left5月のGWの頃にそれまで張りつめていた町の空気が変化したのをよく覚えているが、今日また一段ギアが上がったのを感じた。

ジャック・ロンドン『マーティン・イーデン』(白水社)を読み始める。前にアーヴィング・ストーン『馬に乗った水夫』(早川書房)を読んだので、自伝的小説のほうはもう読まなくてもいっかーと思っていたが、映画の宣伝を見たら、ミーハーの血が騒いでしまった。いま書店に並んでいる本には、ルカ・マリネッリが煙草をくわえている映画の帯が巻かれているが、最初の刊行時の帯の裏には村上春樹のコメントが載っていた。
「残酷なほど力強い本だ。パワフルな絶望。前向きな自滅。」(『遠い太鼓』より)

こうなると、『遠い太鼓』のどこに書かれていたのか確認したくなってしまうのはまあ無理もないことで、『遠い太鼓』の文庫をぱらぱらしていたらp.388にありましたよ。ロンドンに滞在中、『ダンス・ダンス・ダンス』を執筆しながら読んでいる。

ここはすごく暖房のよくきいたアパートで、外ではみんなコートを着ているというのに、中ではTシャツとショート・パンツという格好でも、まだ汗ばむくらいであった。ときどき窓を開けて、アビーロードの上空に頭を突き出して冷やさなくてはならなかった。仕事に疲れると近所の書店で買ってきたジャック・ロンドンの『マーティン・イーデン』を読んだ。残酷なほど力強い本だ。パワフルな絶望。前向きな自滅。天気はいつも悪かった。三日に二日は曇っていたし、しょっちゅうぱらぱらと小雨が降っていた。悪い世界の到来を予告するするような冷たい気の滅入る雨だった。

アビーロードなんかがサラリとでてくるところにちょっとイラっとさせられるが、ロンドンでジャック・ロンドンを読むというのは何かの洒落みたいなものだろうか。

いまのところ、マーティンめっちゃ働いている。働き方改革どころではない。
マーティンには悪いけれど、こちらは明日から三連休。本屋に寄り道して、スーパーで食料を買い込み、気持ちのよい夜風に吹かれて、気分はゆるみきっている。

皿じゃない

やっと涼しくなりホッとしている。歩くのも苦にならなくなった。ぶらぶらひと駅歩く。自分が歩いている道の同じ端を向こうから歩いてくる人がいてすれ違うのが気まずいので前もって向こうの端に渡ると相手も同じことを考えていたようで結局すれ違うことになり、気まずさマックスだった。

日曜の朝、全米オープンで優勝した大坂なおみが、眼前に掲げたトロフィーカップにキスしているのを見たとき「わー、皿じゃないんだ!」と思った。テニスにはそこまで興味はないけれど、子供の頃から毎年NHKで放送されるウィンブルドン大会だけは楽しみに見てきた。男子選手が優勝すると、でかいトロフィーカップが授与され、それにキスするというシーンがお決まりのショットだったが、女子選手のは、カツオのたたきが盛られるような大皿で、見るたびに「えー、皿かよ!なんで皿?ちゃんと料理に励めよってこと?」と子供心にちょっと不満だった。その皿も「ローズウォーター・ディッシュ」などと呼ばれ由緒あるもののようだし、サッカーでも皿状のトロフィーををよく見かけるが、やはり優勝→トロフィーカップ→キスが王道という気がする。テニスの女子は皿!と思い込んでいたので、朝起きぬけに大坂なおみカップキスシーンを見られたのはよかった。

月曜日。今週かばんに入れているのは、三浦哲郎『盆土産と十七の短篇』(中公文庫)と『つげ義春日記』(講談社文芸文庫)。昼休みに食後のコーヒーをすすりつつ、三浦哲郎の短篇を一つ二つ読み、つげ義春の日記を何日分か読む。昼休みを待ちきれず、息もつかせぬエンタメ小説をを鼻息荒く読む昼休みもいいけれど、こんな落ち着いた時間もとてもいい。まあ結局は何を読んでもいいってこと。日記はその月の終わりまでくると、読む区切りをつけやすいが、ある一日の記述が左ページの終わりでちょうど終わるところもいいキリになる。

ゴローさんに影響され、チキンカツを買って帰りカツ丼を作ってモリモリ掻き込む。おいしい。梨とぶどう。

先入観

遠くの台風の影響か雨降ったりやんだり。コントみたいな大雨かと思えば陽が射したり。
通勤途中、ペットボトルの飲み物を飲んでいる4、5歳の子供を見かける。柔らかそうな髪を汗で頭部に張り付かせ、行儀よく膝を揃えて腰かけて、時折「ほわ~」と声を出しながらごくごく飲んでいる。そんなにおいしそうに何を飲んでいるのだろうと思って小さな手からはみ出しているラベルを見ると、ウィルキンソンの炭酸水だった。赤いノーマルのやつ。ええっ?と驚く。甘くないのでいいの? なんとなく子供といったら、甘い飲み物が好きなものだという先入観があった。ファンタとかカルピスソーダとかQooとか。自分が子供の頃はただの炭酸水の選択肢はなかったな。糖分、香料たっぷりの物よりも健康的だと思うが。

チェ・ウニョン『わたしに無害なひと』の最初に収録されている短編は、カップル(イギョンとスイ)の話。十六歳の夏、サッカー部のスイが蹴ったボールがイギョンに直撃し、眼鏡が壊れるというところから二人の付き合いが始まる。韓国名から性別を判断できないので、勝手にサッカー部のスイが男の子で、イギョンが女の子と思い込んで読んでいたら「二人は仲の良い姉妹みたいに」という記述に行き当たる。そうだったのか。自分がどうしようもない先入観にとらわれているのを痛感した。

『わたしに無害なひと』で印象に残ったところ。

愛ほど不公平な感情はないだろうと私はたまに思う。どんなに愛し合っていても、相手よりたくさん愛している人と、相手のほうがたくさん愛している人が存在するのだと。どちらかが惨めだからでも、どちらかが卑劣だからでもなく、愛とはそういうものだから。「砂の家」(p.203)

続きを読みたい

9月が始まる。今『アンダードッグス』で評判の長浦京のひとつ前の長編『マーダーズ』を読んでいる。決して好きなストーリーではないのだけれども、続きが気になって気になって仕方がない。もうとにかく早く続きを読みたい! 朝の通勤時に少し読んで名残惜しくページを閉じ、あー早く続きを読みてえと待ち望みながら迎えた昼休みに少し続きを読んで後ろ髪を引かれる思いで午後の仕事に戻り、やっと退勤だ。残り100ページを切り、ええっ、これどーなるの?とやめられず、コーヒーショップに駆け込み、アイスコーヒーとホットドッグ片手に、最後まで読んでしまった。ラストのアクション盛りすぎじゃないですか。ふう疲れた。

近頃エンタメ熱が再燃している。角田光代『私のなかの彼女』(新潮文庫)に付いている津村記久子の解説の出だしがこれ。

 ものすごくおもしろかった。毎日この時間と決めている本を読む時間が、いつも待ち遠しかった。(p.389)

ですよねですよね。待ち遠しくてたまらないですよね。待ち遠しい時間も読書の楽しみのうち。

帰って、夕飯、入浴を済ませ、さあ次は何を読もう。ここらでちょっとクールダウンするために、エッセイや短編的なものを。小野正嗣『踏み跡にたたずんで』(毎日新聞出版)と村田沙耶香『丸の内魔法少女ラクリーナ』(KADOKAWAを)選ぶ。