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ヨムヨムエブリデイ

先入観

遠くの台風の影響か雨降ったりやんだり。コントみたいな大雨かと思えば陽が射したり。
通勤途中、ペットボトルの飲み物を飲んでいる4、5歳の子供を見かける。柔らかそうな髪を汗で頭部に張り付かせ、行儀よく膝を揃えて腰かけて、時折「ほわ~」と声を出しながらごくごく飲んでいる。そんなにおいしそうに何を飲んでいるのだろうと思って小さな手からはみ出しているラベルを見ると、ウィルキンソンの炭酸水だった。赤いノーマルのやつ。ええっ?と驚く。甘くないのでいいの? なんとなく子供といったら、甘い飲み物が好きなものだという先入観があった。ファンタとかカルピスソーダとかQooとか。自分が子供の頃はただの炭酸水の選択肢はなかったな。糖分、香料たっぷりの物よりも健康的だと思うが。

チェ・ウニョン『わたしに無害なひと』の最初に収録されている短編は、カップル(イギョンとスイ)の話。十六歳の夏、サッカー部のスイが蹴ったボールがイギョンに直撃し、眼鏡が壊れるというところから二人の付き合いが始まる。韓国名から性別を判断できないので、勝手にサッカー部のスイが男の子で、イギョンが女の子と思い込んで読んでいたら「二人は仲の良い姉妹みたいに」という記述に行き当たる。そうだったのか。自分がどうしようもない先入観にとらわれているのを痛感した。

『わたしに無害なひと』で印象に残ったところ。

愛ほど不公平な感情はないだろうと私はたまに思う。どんなに愛し合っていても、相手よりたくさん愛している人と、相手のほうがたくさん愛している人が存在するのだと。どちらかが惨めだからでも、どちらかが卑劣だからでもなく、愛とはそういうものだから。「砂の家」(p.203)