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ヨムヨムエブリデイ

たやすくない日々に宿る僥倖

近頃、夜の9時とかからベッドに横になってゴロゴロしていたらいつの間にか眠ってしまい、朝の5時頃に目が覚めることが多くなった。目が覚めて窓を開けると冷たい空気が入ってきて、効果音のような鳥のさえずりまで聞こえ、まるで高原の朝、気分爽快。結構この時間を楽しみにするようになった。コーヒーと朝食をゆっくり食べ、遅番の日は時間がたっぷりあるので、この日記(のような別の物)を更新しようかと思ったりする。先週は何があったっけな。毎日同じことの繰り返しですぐに忘れてしまうのだけれども、土曜日のことはちょっと良い感触で残っている。

土曜の夜、仕事を終え、やっと長い一週間が終わったーとふらふら書店に入っていくと、刊行予定はまだ先だと思っていた津村記久子『サキの忘れ物』が新刊コーナーに平積みされていた。一冊持ってレジに直行。新刊即買いの作家はそんなにいない。まさにたやすくない日々に宿る僥倖だ。一週間の疲れが吹っ飛ぶ気がした。その後、最寄りのスーパーでパックの寿司を買い、せっかくの寿司が片寄らないように、マチの広いエコバッグのマチの部分に寿司をはめ込み、その上に他の品物を乗せてぶらぶらさせながら帰る嬉しさ。一冊の本でこんなに気分が変わるなんて。でも、こういう本ほどもったいなくて読めないんだわー。今のところ、撫でたり、カバーを外すとカッコいい!とか思ってるだけで満足。読むのは超たやすくないピンチが訪れたときのために大切にとっておく。寿司のウニも最後に味わうためにとっておく。

長いタイトル

休日。水曜日休日は久しぶり。数ヶ月ぶりで映画を見に行くことにする。『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』。前に高橋輝次編著『タイトル読本』を読んでいたら、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』が何人もの人からひどい邦題だと槍玉にあげられ、北村太郎からは「開いた口がふさがらない」とまで書かれていたが、この『Little Women』の邦題もかなりいい(悪い)センいってる。

くもっていたので、映画館まで歩こうと思う。リュックに冷たいお茶入りの水筒や汗拭きタオルや読みかけの『ピエタとトランジ <完全版>』を入れる。1時間ほど歩いたところで休憩しようと喫茶店に入る。11時までのモーニングサービスにギリギリセーフ。アイスコーヒーをちゅるる~と一気に吸引。ピザトーストにサラダ。モーニングはたいていどこで食べてもおいしい。またてくてく歩き12時台からの映画を見終え、遅いランチにナポリタンを食べる。食べたかったんだーナポリタンナポリタンしたナポリタン。書店をのぞき、その後、公園のベンチでお茶を飲みながら、本を読んだり映画のことをぼんやり反芻してから帰る。さすがに帰りはもう歩く気がせず電車で。帰宅し、ひとっ風呂浴び、夜、小腹が空いたので蕎麦を茹でて食べる。疲れたけど愉快な一日だった。自由な中年女だからね。でも本当に自由なんですかね?

大盛り

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              本屋さんしか行きたいとこがない

 

月曜日から雨。涼しいをとおりこして寒いが、暑いよりはずっといい。午前中バタバタ。今朝は時間がなくて弁当なしだったので、たまたま一緒になったK君とランチを食べに出る。日替わりのハンバーグランチ。一つ空けて座る。あまりに腹ペコで大盛りライスを頼む。炭水化物を控えているというK君は普通盛り。何も訊かれず当然のように大盛りがK君の前に置かれる。ははは、こうなりますよねー、ですよねー、と交換。それで嫌な気分になるとかでは全くなく、お約束の結末に、むしろしてやったりという感じ。

 伏見憲明団地の女学生』(集英社)を読み終える。「暮しの手帖」の「あの人の本棚より」のコーナーで枡野浩一が紹介していた三冊のなかの一冊。ずいぶん前に、書評小説『結婚失格』で、太宰治賞に落選したから太宰治賞失格と言及されていた岡本敬三根府川へ』を読んだらとてもよかったことなどもあり、『団地の女学生』もつい手に取った。枡野さんの推し本とは相性がよいという印象がある。10年ほど前の本なので、こんな機会でもなければ絶対読むことはなかったと思う。ありがたい。

まっすぐ帰宅し、夕飯、風呂をちゃちゃっと済ませて、 昨夜録画していた『スイッチ』を見る。

ブラックでイエローで、ちょっとレッド

f:id:yomunel:20200616200312j:plain:left仕事のためというよりも、昼休みを休むために仕事に行っている気がする。ナナ・クワメ・アジェイ゠ブレニヤーの『フライデー・ブラック』を読んでいて、あ、これもしかしてずいぶん前に(確認したら昨年の10月だった)柴田元幸がWeb考える人の連載「亀のみぞ知る」で絶賛していた本ではないかと、ここにきてやっと頭の中の回路がつながった。鈍くていやになる。「亀のみぞ知る」を読んだときには、なんかチママンダ・ンゴズィ・アディーチェみたいに覚えにくい著者名だなと思ったくらいでそれきり忘れていたのだが、本を実際手にして読んでいるときに、これってあの柴田元幸の!と「ピコーン!」と閃いた。荒川洋治の言う「会っていた」というやつ。そこで前は全然頭に入ってこなかった「亀のみぞ知る」を読み返してみたら、内容がスーッと入ってきた。知らなくて読むのと知ってから読むの違い。「ピコーン!」は素晴らしい。

梅雨入り

6月11日、東京アラートが解除された日に、梅雨に入った。その日はたまたま数日前から読みかけていた西崎憲『飛行士と東京の雨の森』をカバンに入れていた。さらにその一週間ほど前に同じ著者の『未知の鳥類がやってくるまで』を読み終え、他のも読んでみたいと思い、手にしたのだ。梅雨入り宣言通り、午前中は晴れ間が覗いていたのに、午後からぐんぐん曇ってきて、夕方帰る頃には雨が降っていた。傘を携えた帰路、『飛行士と東京の雨の森』を取り出したとき、これはドラマのタクシーみたいな本だと思った。絶対タクシーが走っていなそうな場所で、あらかじめ待機していたように絶妙なタイミングで主人公に近づいてくるタクシー。「もうすっかり暗くなっていた。大した雨ではなかったが、長いあいだ歩いていたので体はすっかり濡れそぼっていた。道はあいかわらず広かったが、いまは通る人間は誰もいなかった。木が多くなり、雨の匂いに木の匂いが混じりはじめていた」(p.110)だんだん激しくなる雨の音と湿った匂いを感じつつ、ドラマのタクシー読書を楽しんだ。

14日、どんよりした梅雨空の日曜日。TVerで「孤独のグルメ」 夏の腹ペコグルメ特集を見る。season1ではまだ五郎さんのモノローグが真面目で硬くスカしている。煙草も吸っている。シーズンを重ねるごとに調子に乗ってくる五郎さん。こちらも腹ペコ。午後からカレーを仕込み、夜「村上RADIO」を聞きながら食べる。ついこないだ2時間番組があったばかりなのにね。特に待っているわけではないのになぜか聞いてしまう。伊藤比呂美 『道行きや』 、山口恵以子『いつでも母と』を読んだ。