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ヨムヨムエブリデイ

シリーズものに嵌まる

なにかに「ハマる」。がっつりハマるぞーと前のめりに張り切ってもハマれるものでもないし、油断していたらいつの間にかズブズブとハマッていたりする。いかにも自分が好きそうな要素がてんこもりなのにハマれなかったり、まったく好みではないのに気づけばハマッていたりもして、「ハマる」のは自分自身なのに、予測不能というか、自分でコントロールできない。そこが面白い。

アーナルデュル・インドリダソン『悪い男』を読んでいるのだけれども、これ、いま一番ハマッている翻訳ミステリ。アイスランドが舞台のエーレンデュル捜査官シリーズの七作目。日本で最初に翻訳された『湿地』を読んで気に入り、それから刊行されるたび順番に読み継いできた。新刊がでると嬉しい。派手な展開があるわけでもなく、じっとり湿度高めで地味、なのにものすごく惹かれる。今回はエーレンデュルは登場しない。
自分は北欧ミステリが好きなようで、これまで、ヨハン・テオリンのエーランド島四部作や、ニクラス・ナット・オ・ダーグの三部作や、ヨルン・リーエル・ホルストの警部ヴィスティング未解決シリーズ、アルネ・ダールなどにハマッた。絶対ハマるでしょうと思われるヘニング・マンケルのヴァランダーシリーズには全然ハマらなかったのが不思議。相性の良し悪しがあるのだろう。

二〇二四年二月

先週からゆっくり読んでいた柴崎友香『続きと始まり』(集英社)がとうとう終わってしまった。
ライ麦畑のホールデン少年は、ノックアウトされる本を読み終わったとき、それを書いた作家が大親友で、電話をかけて話せるようだといいのにと言ってたが、電話が苦手な私は、電話の代わりに作家や登場人物の名前を呼びたくなってしまう。『続きと始まり』を最後まで読み、本を閉じたとき、思わず柴崎さ~ん、れいさ~ん、河田さ~んと呼んでいた。年に何度か「読んで、呼ぶ」本に巡り会える喜び。ディテールが素晴らしくてどのページにも「あっ」と立ち止まるところがあった。

 こうして、何かが起きて、画面を見続けるのは自分がこれまで生きてきた中で何度目だろう。
 地震があり、事件があり、テロがあり、戦争が始まり、そのたびにこうしてひたすら画面を見る。二〇一一年の震災のときからは、流れてくる報道の映像だけでなく、インターネットで情報を探すことも増えた。
 しかし、それで何かが変わったことはない。
 自分はいつも見ているだけだ。画面越しに、遠く離れた安全な部屋の中で、「情報」を見ているだけ、時間が過ぎていくだけだ。(p.330)

二〇二二年二月ニ十四日の午後、ウクライナの戦争の始まりを一人の部屋で見るシーンで柳本れいの章が終わっている。それから二年後、能登地震があり、戦争はまだ続いている。れいさんもどこかで見ているに違いない。

柴崎さんと古賀及子さんの対談が四月に行われるそうだが、この組み合わせを企画した方すごいです。

Three cheers for our side

昨日は面倒くさくてずっとさぼっていた車の点検に行ってきた。せっかく点検してもらっても雨降りでいやだなあと気が進まなかったが、予約していたので仕方がない。最近あんまり乗ってないのでバッテリーが弱っているらしくて、それなら帰りに久しぶりにロングドライブしようと思い立ち(雨だけど)、海を見に行こうと海へと向かった。

この道の向こうには

堤防の左側はすぐ海。どこまでが海でどこからが空か境目がわからない。遥か雲の向こうにうっすら船のシルエットが見える。アン・クリーヴスの小説の舞台のシェトランドみたい、知らんけど。地図を見ると、この道の先に防波堤が海へとのびていて、その先端まで歩いて行ってみようとしたが、防波堤の入口に危険!立ち入り禁止!の看板があったのであきらめる。しばらく静かな海や鳥を眺めて車に引き返した。身体が冷え切っていたので、途中に見つけたセブンイレブンで、ホットコーヒーとピザまんアメリカンドッグを買い、かじかんだ指をカップで温めながら人心地ついた。
晴れていたらどんなによかっただろうと思うも、いやいやかえってこんな日のほうが記憶に残るものだ。雨の日の海、楽しかった。

今朝起きると昨日の冷たい雨から一転、キリリと引き締まった冬らしい晴天。なのだけれど、悲しいことに今日は出勤。電車が空いてる。

こういうの(が)いい

『真珠とダイヤモンド』を読んだ勢いでその前の『燕は戻ってこない』と桐野作品を立て続けに読んだら色々濃ゆくてぐったり疲れてしまった。なにか平和でなんも考えずに気楽に読めるものはないかと手に取ったのが久住昌之『するりベント酒』。夕刊フジの連載から厳選しまとめられたもので、久住昌之が弁当でただただ酒を飲む話。崎陽軒の弁当、カツサンド、焼きそばパン、柿の葉寿司などベントのチョイスにそそられる。

今日はチーム長がポケットマネーでランチの弁当を支給してくれる日で、午前中ほか弁のメニューが回ってきて希望の弁当に名前を記入して次の人に渡す。特に値段の上限は決められていないのに皆の注文は、から揚弁当とか親子丼とかやや遠慮がち。あいつ一番たけえの頼みやがったと注目されるのはいやだもんね。私は読んでいた『するりベント酒』に出てきたのり弁がおいしそうだったので迷わず一番しょぼいのり弁にする。魚フライもちくわ天も海苔とごはんと一体化していてシンプルでうまいなあとあらためて思った。こういうのでいいんだよ、こういうので。

おにぎりと真珠とダイヤモンド

今日のオレの昼めし

前回、1月も月末だと書いてからもう10日も経った。早い。その間に節分があり、雷鳴が轟き、雪が降った。節分には、めちゃくちゃ太い葉巻をくゆらせるように恵方巻を2本キメた(職場と自宅で)。
2月は日数が少ないのに祝日が2日あってとても良い月。その代わり連休前の今日は特別に忙しかった。短い昼休みに昼めしをかき込む。いつものおにぎりと、熱くてしょっぱいスープ的なものを啜りたくなり、ロッカーに常備しているシーフードヌードル(ゆで卵入り)も一緒に。これたまに無性に食べたくなるの。
桐野夏生『真珠とダイヤモンド 上』で脳みそにもエナジー補給。困ったときの桐野夏生というか、全然困ってないのだけども何を読んでも一旦ページを開くとやめられなくなる安心感。そして大抵ラストにモヤモヤする。この本は、冒頭のプロローグで結末が明かされているので、もう何が起きても嫌な予感しかしない。早く下巻を読みた~い! 桐野作品は7割ぐらいは読んでると思うが、未読のものがまだ残っているのが嬉しい。何年も前に話題になり消費されまくり、えっ、なんでそれを今ごろ?みたいな中途半端に時代遅れのエンタメ本をブックオフなんかで買って読む楽しさは格別だ。
夕飯のカレーを食べながら、今週分の『つくたべ』を見る。やっと一週間が終わったー。