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ヨムヨムエブリデイ

灰色の夕暮れ

本年度最後の怒涛の有休消化週間で午後半休。忙しくてなかなか異動者の送別会ができないのでと配布された、かなり上等の幕の内弁当を持って退勤。どこか桜の公園で食べようかと思っていたが、あいにく雨がぱらついている。とりあえずマックのフィレオフィッシュセットで空腹を満たし、弁当は持ち帰り、夜食べることにする。
雲がどんよりと重く垂れ込め、くすんだ桜の花が空にとけて、町全体が灰色に沈んでいる。こんな桜もいいもんだ。以前読んだ「銀座百点」編集部編『私の銀座』(新潮文庫)に収められていた大江健三郎「サーバーの犬とぼくの知っていた犬」に、気分がふさいで何もかもが灰色に見える夕暮れにサーバーを読みたくなるとあった。大江健三郎がサーバーを読みたくなるのは、こんな灰色の日だったのかもしれない。これは1963年に「銀座百点」に掲載された。おそらく20代後半に書かれたもので、文章が瑞々しくて大好きだ。この時代に書かれた身辺雑記風のゆるめのエッセイをもっと読んでみたいと思って図書館で探してみたけれど、見つけられなかった。

ひざびさに大きな書店を回遊し満喫。辻山良雄さんによる市場の古本屋ウララの宇田智子さんのインタビューが載った「熱風」や他に小冊子などをいただく。帰りに図書館にも寄ると70代ぐらいの男性が、こんなに静かなのになぜマスクをしているのかと、語気荒くカウンターの若い女性にしつこく絡んでいる。はあ。最近よく見る光景。
帰ってまだ明るいうちに風呂でくつろぎ、豪華幕の内弁当を食べる。食後に八朔を剥く。長島有里枝『テント日記/「縫うこと、切ること、語ること。」日記』(白水社)、高原英理『詩歌探偵フラヌール』(河出書房新社)を読む。滝口悠生『ラーメンカレー』途中まで。すんごくいい。