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ヨムヨムエブリデイ

冬のポケット

緊急事態宣言が出され、どこどこの人出は前に比べて何十%減少したと、過去の映像と現在の映像を並べて報じられているが、通勤時に人が減ったという印象は個人的にはない。寒い朝。天気予報は真冬並みの寒さでしょうと言っていたが、真冬って今じゃないの? 検索すると、同じことを考える人が多いようで、「大寒(1月20日頃)から立春(2月4日頃)までが真冬です」だそう。常識なのか。

しかし冬はコートを着用できるのがうれしい(韓国映画やドラマは、いいコートのオンパレード)。今着ている紺色のゆったりとしたコートは、外に付いている四角いポケットに文庫本がすっぽり入るのがいい。椎名誠がエッセイに、マウンテンパーカーのポケットに文庫本をサッと入れて、なんて書いてあるのを読んで羨ましく思っていたが、自分のワードローブで文庫本が余裕をもってすっぽり収まるのは冬のコートぐらい。今日のポケットには多和田葉子犬婿入り』(講談社文庫)を入れている。

都甲幸治『「街小説」読みくらべ』(立東舎)に、「犬婿入り」は国立の南側を舞台にしているとあり、そうだったっけ、大昔に読んでうろ覚えだったから、読み返してみたいなと思っていたら、この前の休日に買い物した帰り、古本屋の均一にこの文庫を見つけ、わおっ、渡りに船だ!と即購入。そのままコートのポケットに収まった。古本屋の店先やブックオフに転がっている100円のラッキーな出合い。こういうのが一番うれしい。まず収録作の「ペルソナ」を読み、今のマスクの安心感についてちょっと考えた。

先日の本特集のBRUTUSで、壁に寄りかかっている多和田葉子が着ていたコートのポケットには、文庫本がガッツリ入りそうだった。暖かくなったら、『犬婿入り』を持って、国立から谷保あたりを歩いてみたいけど、暖かいとコートはいらないね。