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ヨムヨムエブリデイ

小話臭味

日曜日。目覚ましをかけずに、ゆっくり起きて、ハムとチーズのホットサンドを作り、マグカップになみなみのカフェオレとともに食べる。このところ、サウナと水風呂の日が交互に訪れたような気温差だったが、今日は水風呂の日だ。
カフェオレを啜りつつ、共通テストの国語の問題を読んでみる。加能作次郎「羽織と時計」。『世の中へ・乳の匂い』(講談社文芸文庫)にも収録されている。面白い。W君からもらった羽織と時計をめぐり、語り手の「私」がああでもないこうでもないとウダウダくよくよ思い悩み、結局何の行動もできないところなんて、他人事とは思えない。穂村弘のエッセイでも読んでいるようだ。しかし、その後の設問に、当時新聞紙上に掲載された宮島新三郎の書評が引かれていて、忠実なる生活の再現者として加能氏を尊敬しているのであって、この作品は「小話臭味の多過ぎた嫌いがある」とばっさり斬られている。そっかあ、私は、本来、加能作次郎の作風ではない小話臭味に反応して面白がっていたのかー。

土曜日にtoi booksのチャンネルで行われた「滝口悠生、大滝瓶太のゆるゆる話」で、書けなくなった時、落ち込んだ時、ネガティブな気持ちになった時に、どんな本を読みますか?と訊かれた滝口悠生が、特に決まっていないが、その時読みたい本を読む、どんな暗い小説だろうと、読むというのは、いい方に、希望的な方に進む作業だと思っている、と言っていたのが印象に残っている。
「羽織と時計」を読んで、たとえ的外れでも、面白かった!と思っただけで、いい日曜日だと思える。