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ヨムヨムエブリデイ

オレオ

朝、起きぬけに飲むあったかいコーヒーがおいしい。昨日の残りで弁当をこしらえる。暑いときは、ただそれだけで捨て鉢になったり投げやりになったりしたが、もう鉢は捨てないし、やりは投げない。弁当も作る。

前の連休あたりから読んでいた『夏物語』を読み終えた。第一部は『乳と卵』のリブートで、どこに手を入れているのか(京橋→笑橋とか)がわかって興味深かった。自分の思いはノートに書きつけているが、一切しゃべらなくなった拗らせた12歳の緑子に昔の自分をちょっと重ねたりする。クライマックスで「ほんとのことをゆうてや」と絞り出すようにやっと言葉を発した緑子が、8年後の第二部でどんな大人になっているのかが楽しみだった。普通にしゃべってんのか?緑子。そして第二部へ。

しかし川上未映子は緑子になかなか簡単にはしゃべらせてくれない。緑子なら元気やでとか、彼氏と旅行いってるわとか伝え聞くだけで本人は登場しない。やっと登場したと思ったら、LINEのやりとりの文面が記されているだけでしゃべる声は聞けない。実際に声が聞こえるわけではないけれど、鉤括弧でしゃべっている緑子をどうしても見たい。まあ緑子は後半のストーリーには直接関わらないし、このまま出てこないで終わっちゃうのかもなーとあきらめていると、ラスト100頁をきったあたりで「もしもし夏ちゃん、ひさしぶり」と電話越しではあるけれどいきなり登場して、緑子が普通にしゃべったあああって、それはもう「クララが立った!」くらい興奮した。しかも「せやで」とか「あかんわ」とか大阪弁で4頁以上もべらべらしゃべりまくる大サービス。そして最後にはナマ緑子まで。徐々に姿を現す緑子。これで緑子関係は気が済んだわ。あれだけ色んなことがあって揺れまくって最後はそれを選んだんだね、夏子さん。一番笑ったのは、乳首がオレオ(p.67)ってとこ。

『夏物語』の夏子さんも、柴崎友香『待ち遠しい』の春子さんもかっこよくて、世の中が少しずつ動いてるのを感じた。