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ヨムヨムエブリデイ

夏物語

涼しい、というか肌寒い。暑さに弱い自分にはありがたい。今週やっとボーナスが出て明日からは2連休。しばらく気に病むことが何もない。

ルシア・ベルリンの作品集のはじめの何篇かを読んで、ぐわー、もっと読みたい、だけどもったいなくて読めなーいというジレンマに陥っている。しあわせなジレンマ。そんなところに、杉山清貴&オメガトライブかっていう川上未映子の新刊『夏物語』(文藝春秋)が出て、これは芥川賞受賞作の『乳と卵』のリブートから始まるとのことで、じゃあまずは『乳と卵』を読み直そうじゃないかと思い文庫本を持参する。世間は3連休に入っているのか通勤電車はわりと空いていて、行きと帰りに読み終えた。昔読んだときは、語り手の過剰な大阪弁語りを持て余していたような気がするが、こんなに面白かったっけとどんどんページを繰っていった。

過去の芥川賞作を読む際は「芥川賞のすべて・のようなもの」というサイトが、その時の候補作や選考委員や簡潔な選評がひと目でわかるので便利だ。『乳と卵』を◎で強く推しているのが村上龍山田詠美であとはおおむね賛成、石原慎太郎がひとりだけ「俺は認めん」と突っぱねている。「あと十年たった緑子がどうなっているのか、たいそう興味をひかれる。病んでいるのに、不思議にすこやかな印象がある」と川上弘美。ついこないだのように感じていたが、もう10年以上も前の作品だった。『夏物語』であの3人、特に緑子にまた会えるのが楽しみ。

「群像」8月号を読む。川上未映子×岸本佐知子「ルシア・ベルリン、かけがえのないボイス」。ルシア・ベルリンに似ている作家が思い浮かばないという岸本佐知子フラナリー・オコナー色川武大の『怪しい来客簿』を思い出すという川上未映子。あと津村記久子の「昭和のファミコンと欲望の行方」というエッセイに、最近物欲がなくなり「科捜研の女」の再放送の録画を見るのだけが楽しみだが、2回目までは面白く見るが3回目はさすがに厳しいとあり、笑った。