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ヨムヨムエブリデイ

健二と謙三

曇り空よりうすい日が射す朝。「まんぷく」があると、朝がほんの少し楽しい。仕事忙しく残業。お寿司を買って帰る。
先日読んだCREA小西康陽が、とにかく文章が上手くてかっこいい人とのコメント付きで芥川比呂志の本を紹介していた。「とにかく上手い文章」ってどんな文章なんじゃろ?と興味がわいて、手近にあった『ハムレット役者 芥川比呂志エッセイ選』(講談社文芸文庫)を読んでみたところ、これが上手い文章だと言われれば、なるほど上手いなと思うものの、なんだか感想があらかじめ「上手い文章」方向に誘導されている気もして、本当のところはよくわからない。上手い文章かどうかわからないが、個人的に好きな文章と苦手な文章はある。「てにをは」や文法がめちゃくちゃでも好きな文章はあるし、名文と定評のあるものでも苦手なものがあり、結局は好みの問題ではないかなと思っている。
こういった選書特集では、ああいかにも○○さんが好きそうだなーと思うものが選ばれることが多いが、その中でキラリと光る意外性にいつも惹かれる。でもその意外性というのは、こちらが勝手に作り上げた虚像からはみ出しているから意外というだけで、本人にしてみたら全く意外ではないのだろうけど。
これまで勝手にめっちゃ意外!だったのが、日経の「半歩遅れの読書術」の長嶋有が作家になるまでに一番たくさん読んだ作家が丸山健二だったいうこと。長嶋有丸山健二てなんか全然ピンとこない。最近では、「すばる」10月号で松浦寿輝が「歳月を考えるためのブックリスト」5冊を選んでいたのだが、ベンヤミン古井由吉ときて、そうじゃろそうじゃろ、さすが寿輝は期待を裏切らんなと思っていたら、北方謙三の『十字路が見える』が出てきて、えっ、あの男ロマンの!となった。このエッセイシリーズは滅法面白い、とのことだ。こういう「えっ」はすごく楽しい。