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ヨムヨムエブリデイ

週刊誌のコラム

先日の鳥ジャケで思い出した池澤夏樹の「むくどり通信」が懐かしくて、ここ数日、『むくどり通信 雌伏篇』(朝日文庫)をぽつぽつと読み返していた。「むくどり通信」は93年から98年まで週刊朝日に連載されたコラムで、雌伏篇には、その後半部分が収録されている。
週刊誌の連載といったら、私は、森茉莉の「ドッキリチャンネル」には全然間に合わず、山口瞳の「男性自身」は、最後の最後にギリギリセーフといった感じだった。

常盤新平の『雨あがりの街』に収録されている「借金」というエッセイに、<佐賀は梶山季之山口瞳が大好きである。私と同じく、彼も木曜日の朝に週刊文春を駅前のスタンドで買って「いろはにほへと」をまっさきに読み、金曜日は「男性自身」から読みはじめる>とある。年齢や好みにより、それぞれ贔屓の週刊誌の連載があるのだろう。

当時、単行本にまとまるのを楽しみに待って欠かさずに読んでいたのが、この「むくどり通信」と週刊文春椎名誠の赤マントシリーズとサンデー毎日中野翠の連載。あとナンシー関泉麻人東海林さだおの丸かじりシリーズ、アサヒグラフの白石公子のや週刊小説のえのきどいちろうのとかも好きだったが、個人的ベストスリーは「むくどり」「赤マント」「満月雑記帳」だった。中野翠の連載はまだ続いているし、椎名誠サンデー毎日で「われは歌えどもやぶれかぶれ」を続けているけれど、もう、以前のような熱心さでは読まなくなってしまった。

最近は週刊文春に目を通すコラムが多い。小林信彦「本音を申せば」、宮藤官九郎「いま、なんつった?」、能町みね子平松洋子のなど。やはり必ずチェックする坪内祐三の「文庫本を狙え!」の最新号に、北方謙三『十字路が見える』が取り上げられていた。週刊新潮連載のエッセイをまとめたものとのことだ。週刊新潮では、川上未映子の「オモロマンティック・ボム!」を愛読していたが、昨年末に終わってしまって悲しい。北方謙三のこの連載の存在は知っていたけれど読んだことはなかった。

しかも、文庫本の表紙がこれ。男のロマン的なものには興味ゼロなので、ちょっとこれはないわーと思って、読まず嫌いというか、もし「文庫本を狙え!」を読まなかったら、絶対手に取らなかったと思う。それがたまたま、『むくどり通信』を読んで週刊誌の連載についてあれこれ思いを巡らせているときだったから、週刊新潮の連載ならちょいと読んでみようかなと思った次第。
こんな風に写真に写る男なら、一人称はもちろん「俺」だろうと踏んでいたが、「私」だった。「私」が若い(男の)読者に「君」と語りかけるスタイルで書かれている。帯には<さまよう男たちよ、ここに君の北極星が輝く。>とあり、やはり男の、男の、ロマンだった。