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ヨムヨムエブリデイ

年に2回のお祭り

芥川賞直木賞発表の日。ヘロヘロになって帰ってきて親子丼を拵えて食べながら、ちらちらニコ生を見る。全候補を読んで予想して、というほどのフリークでもなく、今回も、ただホラー好きなのでたまたまま直木賞候補のホラー2作を読んでいただけだった。年に2回のお祭りみたいな気分で、本好きの人たちが、発表前にあーでもないこーでもないとワチャワチャやっているのを楽しんでいる。

芥川賞受賞作の『ハンチバック』もほぼ前知識がなく、いろんなところで引用、話題にされているらしい有名なフレーズ、

私は紙の本を憎んでいた。目が見えること、本が持てること、ページがめくれること、読書姿勢が保てること、書店へ自由に買いに行けること、―5つの健常性を満たすことを要求する読書文化のマチズモを憎んでいた。その特権性に気づかない「本好き」たちの無知な傲慢さを憎んでいた。

を初めて知り、自分の特権性に気づいた。ネット書店や電子書籍が注目を浴びていた2006年に、自分はこの日記に、
「どうしても手に入らないものは仕方がないけれど、本はリアル書店で買おうと思っている。近くに書店のない辺境の地に住むか、歩けなくなるまでは。肉眼で見て、匂いを嗅いで、触ってから買いたい。カバーと帯、見返しやスピンの色、紙の手触り、インクの匂い、厚さ、重さ、目次、解説、奥付などをチェックしてから買いたい」
と書いているが、当時は、辺境の地とか、歩いて買いに行けない、ぐらいまでしか想像力が働いていなかった。まさに、キム・ジヘ『差別はたいてい悪意のない人がする』(大月書店)の「自分には何も不便もない構造物や制度が、だれかにとっては障壁になる瞬間、私たちは自分が享受する特権を発見する」だなあと思った。親子丼を咀嚼しながら色々考えてしまった。

5時に夢中!」のエンタメ番付で中瀬親方が挙げていた前川裕『完黙の女』(新潮社)を読んだ。最後モヤモヤ~。モヤオモ。