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ヨムヨムエブリデイ

僕の好きな文庫本(11)

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村上春樹世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』上下(新潮文庫

カバー・司修

「こんばんは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・村上春樹です」
単発でやっていた頃から、月いちのレギュラー番組になるまで『村上RADIO』をずいぶん聴いてきたのに、いまだに冒頭の「こんばんは」と「村上春樹です」の間がなげえわ!と思ってしまう。そうくるとすでにわかっているのに慣れなくて、間の存在感にいちいちびっくりさせられる。
8/29の「村上作品に出てくる音楽特集」の放送を楽しく聴いていて、自分は初期の村上作品が好きだったんだと改めて感じた。この『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は、4作目の長編小説で谷崎潤一郎賞受賞作。「春が過ぎ、夏が終り、光が微かな透明さを帯びはじめ初秋の風が川の淀みに小波を立てる頃」になると決まって読み返したくなる。世界の終りパートにも、ハードボイルド・ワンダーランドパートにも好きなシーンがたくさんある。地図まで付いている。文庫版は(単行本版も)カバーが何度かリニューアルされているが、函入りの純文学書き下ろし特別作品のデザインを受け継いだこの文庫に愛着がある。