y o m u : n e l

ヨムヨムエブリデイ

偶然ではあらない

折にふれて、文庫本好き好き大好きと言っていて、あ、その話もういいわーと思われるかもしれないが、文庫の新刊コーナーで、柴崎友香『春の庭』(文春文庫)書き下ろし&単行本未収録短篇を加え待望の文庫化!解説・堀江敏幸(640円+税)なんていうのを見ると、やっぱ文庫本はいいなあと改めて思う。「春の庭」は芥川賞受賞作掲載時の「文藝春秋」で読んだのだけれども、同誌に載っていた選評に、村上龍が、「アパートは、上から見ると“「”の形になっている」という一行で、感情移入がまったくできなくなってしまった、と書いていたのが妙に印象に残り、「春の庭」といったら、村上龍が感情移入できなかった小説というのがすぐ頭に浮かんでしまうようになり困ってしまった。
『春の庭』(文春文庫)の背表紙の色は渋めのクリームイエローで、やはり柴崎さんイエロー系で揃えてきたねと、そのこだわりぶりがうれしい。もっと鮮やかな黄色だったら司馬遼太郎とかぶっちゃうね。今月『離陸』が文庫化された絲山秋子さんの文春文庫の背表紙の色は白で、絲山さんの新潮文庫の背表紙も白だから、色を付けないというこだわりがあるのかな、もしそうだとしたら絲山秋子らしくていいなと思う。
この間、『ぜんぶの後に残るもの』『人生が用意するもの』を合本化したオリジナル文庫として刊行された『すべてはあの謎にむかって』で、川上未映子新潮文庫は2冊目になるから、川上さんは新潮文庫の背表紙を何色にするんだろうと、すっごく楽しみにしていたところ、なんと村上春樹と同じ色だった。ハルキブルー(と私は勝手に呼んでいる)。10代からの村上春樹の熱心な愛読者の川上さんのことだから、これはただの偶然ではあらないと思うのだけど、どうでしょう。たぶん、舞城王太郎も同じ色だったような。
柴崎友香さんが、『週末カミング』の文庫版あとがきに、文庫本好きだから文庫になってうれしいというようなことを書いていて、川上未映子さんも、『すべてはあの謎にむかって』のまえがきに、子供の頃文庫本が好きだったから文庫になってうれしいというようなことを書いていて、文庫の好きな私も文庫で読めてとてもうれしい。