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ヨムヨムエブリデイ

ひと皿の小説案内

食べ物のアンソロジーというのは、読めばそれなりに楽しめる安全パイだけれど、近ごろは、ひとつのメニューや食材に限定されたアンソロジーが続々と刊行されちょっと食傷気味でもある。そんな中で、ディナ・フリード著、 阿部公彦監修・訳『ひと皿の小説案内 主人公たちが食べた50の食事』が写真もよくて、とても面白く読んだ。
雑誌にはそれぞれ必ず(立ち)読む連載があり、たとえば「dancyu」では、角田光代堀江敏幸が交代で執筆している「私的読食録」だ。結構長寿の連載。その号のテーマの料理にちなんだ本を選んでエッセイに仕立てている。鮨特集では堀江さんが阿川弘之の「鮨」を、肉特集では角田さんが国木田独歩牛肉と馬鈴薯」を選んでいたりして、いつもその選択が絶妙で、読んだ後、言及されている本を手にしたくなってしまう。『鮨 そのほか』は図書館で借りて読んだ。
最近は、表紙の特集を見て、中身を開く前に、何の本を選んでいるか当ててみるのが習慣になった。ほとんどはずれるけれども。ただ一度だけ、ワイン特集のとき、角田さんだったら開高健の「ロマネ・コンティ・一九三五年」かな、でもワインといったら、ロアルド・ダールのアレでしょうと思いつつページを繰ると、ロアルド・ダールの「味」だったことがある。「ロマネ・コンティ・一九三五年」は過去のワイン特集で、角田さんがすでに取り上げていたのだった。
で、最新号の4月号はパスタ特集。うーんパスタかぁパスタパスタ、ふと絲山秋子「アーリオ オーリオ」が浮かびページを開くと、はずれ。正解は、アントニオ・タブッキの短篇集『逆さまゲーム』所収の「土曜日の午後」から、リコッタ・チーズ入りのラヴィオリ。タブッキのラヴィオリか、さすが、本場から持ってきたね。
あと『波』に連載中の津村記久子「やりなおし世界文学」の選書も個人的にいつもそそられる。
肌寒い日曜日、図書館本の椎名誠アイスランド』、村田喜代子『八幡炎炎記』、『フラナリー・オコナーとの和やかな日々』など読みながら終日ゆっくり過ごす。アイスランドにはいつか行ってみたい。