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ヨムヨムエブリデイ

あらしのよるに

出張のため車通勤の日。雨降りなのでちょうどよかった。仕事もヒマで、めずらしく定時あがり。いつだったか東川端さんが 「帰るときに濡れると嫌だから、雨の日は、なるべく本を買わないようにしている」と日記に書いているのを読んで、かっこいいなあと思ったものだ。見習いたいが、せっかく出張に来たんだから少し遠まわりして、いつもは行かない「ブ」に寄ってから帰ることにする。
行きつけの店だと通っているうちにだんだん新鮮味がなくなってしまうのだけど、はじめての「ブ」は、棚を端から端までじっくり見ていくのがたのしい。105円棚から上林暁『禁酒宣言』(ちくま文庫)、江藤淳『妻と私・幼年時代』(文春文庫)、石垣りん『空をかついで』(童話屋)、大江健三郎『懐かしい年への手紙』(講談社文芸文庫)、J.G.バラード『溺れた巨人』 (創元SF文庫)など。
『禁酒宣言』がうれしかった。自分が酒を飲まないので、なんとなく買いそびれていたから。坪内祐三解説のすぐあとに、スタンレー鈴木の文章があるのがすんごく可笑しい。「レイモンド・カーバーの作品世界と、上林暁のそれとは、一見すると、少し似ています」 とスタンレーさん。 『妻と私・幼年時代』は文庫版はもっていなかったが、巻末の武藤康史による詳しい年譜がおもしろくて、この年譜だけで買ってよかったと思う。
ゆっくり風呂につかって、あとはベッドに寝ころんで、とっかえひっかえ本を読んだ。風の音を聴きながら、時々うとうと。風の強い夜は、必ずカポーティのことを考える。
Think of nothing things, think of wind.(何も思うまい。ただ風にだけ心を向けよう) /カポーティ「最後の扉を閉めて」より