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ヨムヨムエブリデイ

師走の風

夫婦善哉/織田作之助

今週が忙しさのピークらしいっすよと言われなんとか乗りきったら、次の週のほうがさらにすごかったということの繰り返し。ピークonピーク、ピークの十二ひとえのような日々。ピークは本当にやってくるのかしら。なかなか「城」にたどり着けないKのような気分だ。
帰りにドトールミラノサンドブレンド。白いチェブラーシカがかわいい。織田作之助夫婦善哉』(新潮文庫)を開き、ラスト二篇の「世相」「競馬」を読んでしまう。《凍てついた夜の底を白い風が白く走り、雨戸を敲くのは寒さの音である。厠に立つと、窓硝子に庭の木の枝の影が激しく揺れ、師走の風であった。》が「世相」の出だし。久しぶりのオダサク良かった。34歳で死去って早すぎるなあ。
外にでると2009年の師走の風が吹いている。マフラーに顔を埋め、ポケットに手を突っこんで、銀杏の黄色い絨毯のうえを歩く。イルミネーションが輝く、慌ただしい師走の街を歩くのは楽しい。くたびれているけれど無駄にテンションが上がり、欲しかったマラマッド『喋る馬』(スイッチ・パブリッシング)を買ってしまった。今度の休みにゆっくり読もう。
織田作之助をもっと読みたくなり青空文庫を見ていたら「僕の読書法」というJJおじさんみたいなタイトルの文章があった。

僕は勉強のために読書することはすくない。たのしみのために読書するのである。だから、たとえば鴎外なら鴎外を読んだあとで、あわてて誰かの鴎外研究を繙いてみたりするようなことは避けている。鴎外の作品という実物にふれているたのしみを味えば、もうそれで充分だと思う。

明日は忘年会。雨降りだっていうし、憂鬱。夜は窓を敲く師走の風の音を聴きながら『めくらやなぎと眠る女』をちょっとずつ読む。〈めくらやなぎと寝る女〉で検索してくる人がすごく多いんだけど、めくらやなぎとは、寝ません。