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ヨムヨムエブリデイ

新聞小説

長い(分厚い)長編小説は、寒い冬の夜の風呂と同じで、フタを開けて中に入るまでが億劫で、なるべく先延ばしにしたくていつまでもグズグズしているものだが、いったん入ってしまえば、ああ、こんなにいいものだったんだ、やっぱ入ってよかったなあと、ついさっきまで死ぬほど億劫がっていた自分のことなんかすっかり忘れてしまう。というようなことを、ようやくページを開いた川上未映子の『黄色い家』を読みながら考える。

『黄色い家』は読売新聞に連載(2021.7.24~2022.10.20)された新聞小説。やはり、フタを開けられるのを待っている津村記久子の『水車小屋のネネ』はちょうど同じ時期(2021.7.1~2022.7.8)に毎日新聞に連載されたもの。新聞小説は、始まってしばらくは毎日楽しみに追いかけて読むのだけれども、忙しかったりで間が空いてしまうと、ああもういいや、単行本になってから読もうとあっさり路線変更するのがほとんどだ。

ここ何年かで読んだ新聞小説の本では、松浦寿輝『無月の譜』(毎日)、阿部和重『ブラック・チェンバー・ミュージック』(毎日)、中島京子『やさしい猫』(読売)、角田光代『タラント』(読売)、島田雅彦パンとサーカス』(東京)、平野啓一郎『本心』(東京)、山田詠美『つみびと』(日経)などが特に印象に残っている。

『黄色い家』を開き、これを毎朝届く新聞でちょこっとずつ読んでいた人たちってどんなにやきもきしてただろうなと思ったりする。自分は先へ先へとどんどんページを繰りながら。夜、仕事からヨレヨレになって帰ってきて、風呂に入ったあと、韓ドラを一話見て、眠るまで本の続きを読むのが楽しみでたまらない。