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僕の好きな文庫本(21)

池澤夏樹『インパラは転ばない』(新潮文庫

カバー装画・杉田比呂美 解説・松村栄子

杉田比呂美ジャケ本。この夏、マイクル・Z・リューインの翻訳の新刊が刊行され、ミステリマガジンでも特集が組まれた。その際、立て続けに出た三冊すべてのカバー装画が杉田比呂美によるものだった。そうこなくっちゃ。リューインといえば杉田比呂美、というかもうアルバート・サムスン=杉田比呂美。昔愛読していたハヤカワ・ミステリ文庫の〈アルバート・サムスン〉シリーズのカバーはとても洒落ていた。宮部みゆき若竹七海やクレイグ・ライスなど、杉田比呂美のカバーがついていると、それだけでなんだかよいミステリーの匂いがする。

アルバート・サムスン〉シリーズの最初の一冊『A型の女』がポケミスからハヤカワ・ミステリ文庫に入ったのが1991年。本書『インパラは転ばない』が新潮文庫に入ったのが1995年。自分が杉田比呂美ジャケを意識しはじめたごく初期の本かもしれない。池澤夏樹の軽妙なエッセイとの相性もバッチリで、ところどころに杉田比呂美のカットが入っていて、杉田ファンには贅沢な一冊。