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ヨムヨムエブリデイ

こぢんまり

相変わらず慌ただしい日々。お裾分けで、今度は梨と葡萄をいただいて帰る。果物はむいたり皮出したりするのが面倒だからいらないというK君の分までもらってホクホク。そういえば父も、母が夏みかんの薄皮をひとつひとつむいてあげないと食べなくて、子供じゃないんだから自分でむけや!と歯痒かった。武田百合子の「枇杷」だって、一見いい話っぽいが、「俺のほうはうすく切ってくれ」と百合子さんに切らせる泰淳さんに、枇杷ぐらい自分でむけや!と苛立っていた。まあ、本人たちがそれでよければ、いいんですけれども。

このところ、帰りの車中で、金原ひとみ『ミーツ・ザ・ワールド』と、今村夏子『とんこつQ&A』を読んでいた。疲れているときは笑いのハードルが低くなるようで、声をあげて笑いながら読んだ。マスクしていてよかった。『ミーツ・ザ・ワールド』はSPURに連載されていたためもあると思うのだが、『テニスボーイの憂鬱』や『走れタカハシ』のような(じゃない方の)村上龍作品を思い浮かべた。電車を降りて、家まで歩く間も、顔の筋肉に笑いの名残があって、ああ笑うのって気持ちいいなあと思った。

『飛び立つ季節 旅のつばくろ』を読む。なぜか新刊が出るたびに読んでしまう沢木耕太郎。途中、「こじんまりとした建物だった」(p.205)という一文に、おや?と思った。ちんまりに小が付くから「こぢんまり」と認識していたので調べてみると、やはり【1986年に内閣が告示した「現代仮名遣い」では「こぢんまり」が正しいと認定しているため、マスコミなどの表記もすべて「こぢんまり」に統一されている】とある。しかし「小締まり(こしまり)」の音変化で「こじんまり」と使われるようになった説があるため、「こじんまり」も間違いではないとも記されている。へぇそうだったんだー。そういうのを考慮した上での「こじんまり」だったんだね。

タイトルに曜日と動物名が付いた恩田陸のエッセイシリーズ2冊目の『日曜日は青い蜥蜴』に、

沢木耕太郎のエッセイを読むたび、構造が丸谷才一のエッセイに似ていると思う。どちらも「窓から入って正面玄関から出る」みたいな印象を受けるのである。(p.40)

とあったが、そうそう、窓から入る感じわかるわかる。この恩田陸のエッセイシリーズもとても面白い。