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ヨムヨムエブリデイ

お盆休み

13日から4日間お盆休み。といっても14日が日曜日なので実質的には3日間なのだが、それでも連休は嬉しい。13日の台風の合間を縫って帰省し、それまでが異様に忙しかったので実家での~んびり過ごす。実家の母が、お向かいに住む大学生高校生のお子たちから○○さんと、苗字ではなく名前にさん付けで呼ばれていて、なんかいいなと思った。名前で呼ばれてるんだと冷やかすと、お子たちの親が昔からそう呼んでいたからだろうとのこと。たった数日間といえど、仕事に行かなくていいので気に病むこともなく、おいしいものを食べて、本を読んで、動画を見るなど平和な日々。

 だからなにも起こらない。
 葛藤もなく、悩みもない。
 こういう人って案外多いと思う。
 そして人類の生と死の闇の中に消えていくのだ。
 もしかしたらいちばん幸せなタイプの人生かもしれない。そういう人生のしみじみと明るい良さについて描いた物語は少なすぎやしないだろうか。みんななにか壁にぶつかったり、乗り越えたり、成し遂げたり、緩急があるからこそいいみたいな話ばっかりだ。天国にはなにもトラブルがなくて退屈だから地上に生まれてきて学ぶのだとさえ言ってる人がいるが、そんなはずはない。頭が悪い私にだってそのくらいわかる。進化した人類、あるいは天国の人類は、トラブルがなくて春風が吹いていて、このほうがいいなあ、と絶対思ってるはず。(p.228) 吉本ばなな『ミトンとふびん』 所収「情け嶋

夕方、食料をどっさり持たされて戻ってきた。なんといっても自分の部屋がいちばん落ち着く。春風が吹いているような日(実際はめちゃくちゃ熱風だけど)はあと一日残っている。

帰りの道中に読み終えた辻原登『隠し女小春』(文藝春秋)がこわおもしろかった。次から次へと蘊蓄が出るわ出るわの蘊蓄小説。「恭子は、男性が女性に蘊蓄を披露したがるmansplainingが始まったと思ったが、それは口にせず」(p.256)という一行にニヤリとする。北村薫の蘊蓄小説も作者が楽しんで蘊蓄を披露しているのを感じる。