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ヨムヨムエブリデイ

渾身の自伝的小説

毎日疲れてヘロヘロのうえに酷暑で、どうにか家にたどり着いたときには、汗で前髪がワカメのように額に貼りついて、全身ドロドロになっている。滝行を終えた後、または『マディソン郡の橋』の雨に打たれるクリント・イーストウッドみたいだ。それが昨日今日と暑さがやや和らぎ、前髪もエアリーでほっとひと息つく。

先週、新潮文庫の新刊コーナーを流していたら、白石一文『君がいないと小説は書けない』が目にとまった。帯に作家生活30周年渾身の自伝的小説とある。直木賞作家で話題作もたくさんあるのに、なぜかこれまで一冊も読んだことがない作家。以前、批評かなにかで、男に都合のいい女ばかりが出て来ると言及されていたのが頭の片隅にひっかかっていたからかもしれない。で、タイトルが『君がいないと小説は書けない』なんて、あらまあ、とんだ甘えん坊さんだこと。
かなり前、林真理子坪内祐三の対談記事に、坪内祐三文藝春秋の入社試験を受けて落ちた年に受かったのが白石一文だったとあった。この自伝的小説には、のっけからA社(文藝春秋)時代の話が出てきて、こういうの大好物なので読んでみることにした。今のところ、面白い、というかとても興味深く読んでいる。初めて読む作家の本は、知らない道を行くのと同じで、ちょっと不安もあるけど、いつもわくわくする。