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ヨムヨムエブリデイ

心を使わない人

4月ももう半分を過ぎた。朝の通勤時、ランドセルのピカピカぶりから、おそらく新一年生と思われる女の子が青信号の横断歩道を渡り始めたのだけど、「白いところ以外を歩いたら死ぬ!」というルールが彼女の脳内にはあるようで、横断歩道の白い部分だけをぴょんぴょん飛んで渡っていく。彼女が飛び跳ねるたびに、背中のランドセルもガッコンガッコン派手に跳ねて、見ていてなんかせつない。無事死なずに横断歩道を渡り終えてホッとする。

松浦理英子『ヒカリ文集』(講談社)を読んだ。〈心を使わない人〉賀集ヒカリをめぐる6人の男女の話。「あたし」という一人称を一度も使ったことがなくて「わたし」しか使う気にならないという登場人物の飛方雪実と、松村栄子『僕はかぐや姫』の〈あたし〉にならないように唇を触れ合わせて〈わたし〉と呟く千田裕生が重なった。〈心を使わない人〉に関しては、ヒカリとはまた違ったタイプだが、自分も心を使っていないよなと思う。仕事上は、感じよく誠実でいようと精一杯努めているが、上っ面だけで心がまったく触れ合っていない。薄っぺらのぺらっぺら。