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ヨムヨムエブリデイ

長い別れ

先日転倒して流血しているお年寄り(Mさん)を病院までお連れし、名前や住所を尋ねられた際、勤務先だけ教えていたら、14日にそのMさんが息子のお嫁さん(息子じゃないんだー)と一緒に勤務先を訪ねてきた。フォレストガンプが膝に乗せていたようなチョコレートのアソートボックスと、コートの袖に血が付いちゃってたからとクリーニング代と書かれた封筒までくれようとするので固辞すると、固辞固辞合戦で収拾がつかなくなり、適当なところで折れて、あ、それではどうもーといただく。固辞固辞合戦の落としどころは難しい。Mさんはとてもお元気そう。唇を少し切っただけで骨折などもなかったとのこと。毎晩、食後にコーヒーといただいたチョコレートを一粒ずつ食べるのを楽しみにしている。

更新された「深緑野分のにちにち読書」を読んでいると、その横に【特報】レイモンド・チャンドラー田口俊樹訳『長い別れ』創元推理文庫より4月刊行!とある。『長いお別れ』の「お」が取れちゃってるし。なんとなく、村上春樹が訳したら最終形態、というイメージが自分の中にあったので、え、さらにまた新訳が出るの?と思った。早川と東京創元社の文庫対決。田口俊樹といったら、まずローレンス・ブロックが浮かぶ。昨年刊行された『日々翻訳ざんげ』(本の雑誌社)は、アン・タイラー『アクシデンタル・ツーリスト』のことなど、とても興味深く読んだ。新訳では、マーロウの一人称が「俺」になったりするのだろうか。

「言葉の小姑」山田詠美『吉祥寺ドリーミン てくてく散歩・おずおずコロナ』(小学館)を読む。熱血ポンちゃんシリーズを読んで育ってきたので、新刊が出るとつい手に取ってしまう。「文藝春秋」3月号の芥川賞の選評では、『皆のあらばしり』のラストについて「こういう仕掛け、いらないから」とばっさり斬っている。でも芥川賞の選評は、歯に衣着せぬ毒舌キャラの山田詠美をこれみよがしに演じているように思う。