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僕の好きな文庫本(13)

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金井美恵子『小春日和 インディアン・サマー』(河出文庫

カバーデザイン・金井久美子 解説・斎藤美奈子

11月にはいってから穏やかな晴天が続いていて、今日なんて雲ひとつない見事な青空だったから、次の「僕好き」はこの『小春日和』で決まり!と思った。大好きな目白四部作のなかの一冊。小説家のおばさんと桃花コンビが過ごす日々。桃子の一人称は「あたし」で、花子は「オレ」。斎藤美奈子の解説に、『小春日和』は、これと同じ年(正確には10ヶ月前)に出版された吉本ばなな『キッチン』のパロディとしても読めるように思うとある。なるほど「台所で一一台所とかお勝手とは決して言わずにキッチンと言う人が、世の中にはいるんだけど、あたしは、どうも、「システム・キッチン」と続けて言うのなら言えるけど、普通の台所は台所としか言う気がしない(p.62)」と桃子に言わせているところなどに軽い目配せを感じる。後に高崎俊夫の本で小説家のおばさん(大原麗子)、桃子(つみきみほ)でTVドラマ化されていたことを知った。今だったらどんなキャスティングがいいだろうと考えるだけで楽しい。