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ヨムヨムエブリデイ

文章がうまい人

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10月の晴れた日にはいつも、梶井基次郎「太郎と街」の冒頭「秋は洗ひたての敷布(シーツ)の樣に快かつた。」が頭に浮かぶのだけれども、台風が空気をきれいにしてくれたのか、今朝の空はまさに洗いたてのように濃いブルー。と思っていたらやたら暑くて午後に雨。

土曜日の通勤は電車が空いてていい。文庫で安岡章太郎を再読。村上春樹の51 BOOK GUIDEに、戦後の日本の小説家の中でいちばん文章がうまい人、最初に「ガラスの靴」を読んだときそのうまさに驚愕した、と紹介されていたので、どれどれと鞄に入れてきた。これは『若い読者のための短編小説案内』にも取りあげられていた。

「これ、う、うまいんですかね?」と思う。自分は文章のうまさというのがよくわからない。いや、何かを読んでいて、うまいなあと思うことはあるのだが、それはたぶん自分の好みに合っているだけで、一般的にうまい文章かどうかわからない。名文と評判のものを読んでもピンとこないことが多いし、悪文に強烈に惹かれることもある。自分が好きなんだからいいじゃない、文句ある?と謎の開き直り。「戦後の日本の小説家の中でいちばん文章がうまい人」といわれて読んでいると、ああ、これが戦後の日本の小説家の中でいちばん文章がうまい人の文章なんだという気が、だんだん、してきて、だんだん、眠くなる。