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僕の好きな文庫本(8)

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村田喜代子『八つの小鍋 村田喜代子傑作短篇集』(文春文庫)

装画・ささめやゆき 装幀・菊地信義 解説・池内紀

「ものすごく面白いのに、なぜかすぐに本が絶版になってしまって地団駄をふむ作家のツートップが、私にとっては河野多惠子村田喜代子だ。」「『真夜中の自転車』も『蟹女』も『ルームメイト』も『鍋の中』も『望潮』も絶版。ぜんぶまとめて復刊希望。」図書カード三万円使い放題企画に登場した際、こう書いていたのは岸本佐知子。御意!
新しめの著作はポツポツと文庫化されているが、初期の小説集では、芥川賞受賞作収録の『鍋の中』(文春文庫)以外は文庫化すらされていない。『鍋の中』もとっくに絶版。その代わりといった感じで刊行されたのが、初期の短篇からの選りすぐりを集めた、この村田喜代子傑作短篇集だった。「鍋の中」(芥川賞)、「白い山」(女流文学賞)、「真夜中の自転車」(平林たい子賞)、「蟹女」(紫式部文学賞)、「望潮」(川端康成文学賞)含む八篇収録。婆ちゃんオンパレード。意外に「熱愛」が好き。傑作短篇集がでただけでもありがたいが、できれば傑作集ではなくて、個々の短篇集を「文庫」で読みたい。