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ヨムヨムエブリデイ

今年も春の丹まつり

もう3月中旬で、すっかり春っぽくなってきて残念なのは、冬物のコートを着られなくなったこと。防寒着という用途以上に、文庫本入れ(ポケット)として非常に重宝していたから。これからはカバンからわざわざ本を取り出して読んだ後、再びカバンにしまう手間がふえることになる。リュックのときは、よりめんどくさい。それで、名残惜しさを込めて今年の冬のコートにベストマッチした文庫本を選んでみた。今年の私のコート本大賞は、小山田浩子『庭』(新潮文庫)、でした。カバーも冬っぽくてよかった。帯文津村記久子、解説吉田知子、いい。

ここのとこ荒川洋治『文学は実学である』(みすず書房)をゆるゆる読んでいた。1992年から2020年まで28年間に発表されたエッセイより86編を精選、さらにボーナストラックとして単行本未収録の近作8編が付く。旧作はほぼ読んでいるのでずっと読もうかどうしようかと迷いながらいざ手に取って読み始めたら、やっぱりよくて、荒川洋治いいなあいいなあとニコニコしつつ最後まで。クリームドーナツの話なんてすごく短いのだけれど大好き。そして帰りに、この本で紹介されていた大岡信 谷川俊太郎編『声でたのしむ 美しい日本の詩』(岩波文庫)を買ってしまう。こういう文庫こそコート本にうってつけなのだけど。

次は小沼丹『ミス・ダニエルズの追想』(幻戯書房)をゆるゆると読む。全集未収録随筆70篇収録。カバーの色が春らしい。今年も春の丹まつり。