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ヨムヨムエブリデイ

なかなか明けない梅雨の夕暮れ

感染者数が増えようと減ろうと、毎朝出勤して夜帰るの繰り返し。この数ヶ月の間に、電車が混んだり空いたり、店が開いたり閉まったり、人との距離が伸びたり縮んだりした。

帰りは雨がパラパラしている。雨と湿気と仕事の疲れがブレンドされた何とも言えない気分を記そうと試みるも、乗代雄介『最高の任務』への山田詠美芥川賞選評、

<眉間にたまった涙感を息へ逃したら声が震えた>、<滲んだ涙を暮れの空に吸わせる>、<声帯が素敵にりぼん結びされている>……えーっと、これ、文学的な表現ってやつ? いちいち自意識過剰。

を思い出し、やめる。乗代雄介のようにうまくはいかなくても、こんな憂鬱な梅雨の夕暮れには、こういう系のことってつい言いたくなってしまう。その乗代雄介の分厚い『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』(国書刊行会)を書店で見かけたが、3,630円という値段に躊躇する。同名のブログは以前から愛読していて、柴崎友香の『フルタイムライフ』の感想なんか特に印象に残っている。目次をめくると、後半に収録されている「ワインディング・ノート」から読みたいと思うが、なにしろどんな本も頭から順番に読んでいかないと気が済まない変に几帳面な性質なので、買うのをためらっている。

分厚い本といえば、磯崎憲一郎『金太郎飴』(河出書房新社)もで(やはり3,630円)、これは「文芸時評」から読みたい気持ちを抑えて、なんとか頭から順番に読み進めている。

読み終えたのは、最果タヒ『コンプレックス・プリズム』(大和書房)。最果タヒのエッセイ集を手にすると、いつも「めっちゃ薄っ!」と思うのだが、色々考え込みながら読むので、読後には「薄っ!」という感覚はどこかに行ってしまっている。