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ヨムヨムエブリデイ

夜の電話

日曜日。梅雨らしい空模様が続いている。
勤務先は24時間対応ダイヤルというのが義務付けられていて、夜間対応の携帯電話を輪番制で担当することになっている。電話手当が付くので、まあ仕事のうちだ、しょうがない。全く電話が鳴らない運のいい夜もあるが、だいたい2~3件といったところ。しかしたまーに電話魔のような同じ人から何度もかかることがあり、昨夜がその日だった。そういう人は内容のないことをダラダラしゃべりまくり、寂しくて不安でとにかく誰かとしゃべりたいんだなと思われる。こちらは仕事に関することなら責任をもって応対するけれど、それ以外のことに適当に答えてあとで問題になるのもアレなので、聞き役に徹する。それで相手の気が済むのなら。

腹をくくり、ミルクティとおやつを用意してずっと起きておくことにする。明日が日曜でよかった。電話の合間に安部公房『けものたちは故郷をめざす』(岩波文庫)の続き。読み始めは状況設定がよくわからずなかなか入り込めなかったが途中からひき込まれ、夜が明ける頃に読み終える。寒い!空腹!痛い!えーそんなぁ~。この岩波文庫版は814円(税込)だが、新潮文庫版は605円(税込)で入手できる。リービ英雄の解説付きというのもあるけど、「岩波文庫安部公房を読む」というスペシャル感に200円を余分に払うという感じ。岩波文庫大江健三郎を読むとか開高健を読むとかやはりスペシャル感があるものね。佐藤正午もちょっとズルしたくもなると思う。

朝がきて、電話を転送し電源を切ってからゆっくり眠った。午後目が覚めて、入浴、夕ごはん。テレビでは九州の豪雨のニュース。選挙速報が始まったと同時に当選確実の速報。
「……ちくしょう、まるで同じところを、ぐるぐるまわっているみたいだな……いくら行っても、一歩も荒野から抜けだせない……」(p.296)