y o m u : n e l

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同じ本

連休明け、久しぶりの出勤。見事な五月晴れ。明らかに連休前よりも人が増えている。緊急事態宣言が延長され、新感染者数が減ってはいるが油断するな、第2波が来るぞとニュースなどでしきりに繰り返されているが、行き交う人の表情(マスクでよくわからないので雰囲気)が連休前とはちがって緩んでいるのを感じる。緊張感で張りつめていたものが、ドゥルル~ンと少しずつ毛穴から溶け出しているみたい。緊急事態宣言が解除される日よりも、連休を境にした今日の空気の微妙な変化のほうが記憶に残るだろうなと思う。

連休に読んだポール・オースター『サンセット・パーク』は今の自分にはうーんという感じだった。主人公が彼女と出会うシーン。

会ったのは六か月前、公園での、五月なかばの土曜の夕方近くに生じたまったく偶然の出会い、およそありえない遭遇だった。彼女は芝生に座り込んで本を読んでいて、そこから三メートルと離れていないところで彼も芝生に座って本を読んでいて、何とそれは彼女が読んでいたのと同じ本だったのである。まったく同じソフトカバー版の『グレート・ギャツビー』、彼の方は十六歳の誕生日に父親からプレゼントしてもらって以来読むのはこれが三度目だった。(p.9)

村上春樹の「偶然の旅人」(『東京奇譚集』所収)は、カフェで偶然同じチャールズ・ディケンズの『荒涼館』を読んでいた二人の男女が仲良くなる話で、本好きの人には、偶然同じ本を読んでいた人とフォーリンラヴというのがあこがれのシチュエイションなのかもしれない。私は一度もないです。あ、一度だけ、電車で江國香織の『間宮兄弟』を読んでいた時に、隣に座った女性が同じ本を読んでいて「うわあああ、ねえ見て見て!これ一緒おおおおおお!」と一人で興奮したのだけど、会話を交わすこともなく終わった。fuzkueの「会話のない読書会」に行けば、その感じをたっぷり味わえるのかも。サイレントブック乱交パーティというか。

帰りに見上げた月が明るくてきれいだった。「フラワームーン」だって。この前、月がきれいだと書いたのはいつだったかなと、この日記(もどき)を読み返したら、4月8日で緊急事態宣言が発令された翌日のこと。