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ヨムヨムエブリデイ

マスクの力

昨日の雨が嘘のような青空。風が強い。
職場の近くにあるコンビニに、いつもきびきびニコニコしてとても感じのよい30代ぐらいの女性店員がいる。しんどい時もたまにはあるだろうのに、いつ行っても安定して感じがよく、朝、そこで買い物をすると気分よく一日を始められる気がする。緊急事態宣言発令後も変わりなくきびきび働いているので、行くたびに「こんな大変なときにいつもありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えようと思うのだが、いざとなったら口からでてこない。

「こんな大変なときにいつもありがとうございます」なんて、社長が新入社員に「おう、がんばってるな、ごくろうさん」と言うみたいで、上から目線的で失礼なんじゃないだろうか。もともと私は何事も、軽やかにとか、さりげなくとか、スマートにとかできない性質で、どんな軽い物事も、私の手を経てしまえば、情念がじっとり沁み込んだ演歌調のものに変わってしまう。

でも今日こそは、言おうと思った。マスクの力もあるし、昨日読んだやさしい世界 柴崎友香|好書好日に背中を押された感じもある。お釣りをもらい、商品を受け取りながら精一杯さりげなさを装い「こんな大変なときにいつもありがとうございます」と言ってしまった。すると「ありがとうございます!」と応えてくれて、マスクの上の目が笑った(ように見えた)。ただの自己満足かもしれない。向こうは「やたら絡んでくるウザい客、近くでしゃべるなや」と思っているのかもしれない。でも思い切って言ってよかったと思った。これからはどう思われてもいいから、感謝の気持ちをどしどし伝えていこうと思う。

それはそれとして、腹の中ではこんなことも考えている。ふふふ。

発言小町ツイッターで、明らかに間違っていて態度も悪い人を探してしまうことがある。自分が心置きなく正しい人として憤る素材として。みんなから間違いを指摘され、批判されて懲らしめを受けるのを見たくて。実社会では大きな声を出したり怒ったりできないから、こっそり負の感情を処理するのだ。誰も知らないからできるのだ。これは私の個人的な恥である。 『御社のチャラ男』p.293