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ヨムヨムエブリデイ

2019年の10冊

毎年30日に仕事を納めてから帰省の準備をしながら今年読んだ本をあれこれ振り返るのが楽しいです。いろんな人が自分の好み全開で選んでいるリストを眺めるのもとても楽しい。でも、年末のベストのために、というかこれはベストに入るなとか考えながら日々の本を読むのはあまり楽しくないです。


(識者ではない人が選ぶ)2019年の10冊(順不同)

ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』(岸本佐知子訳、講談社
長嶋有『私に付け足されるもの』(徳間書店
川上未映子『夏物語』(文藝春秋
マイケル・オンダーチェ『戦下の淡き光』(田栗美奈子訳、作品社)
チョン・セラン『フィフティ・ピープル』(斎藤真理子訳、亜紀書房
千葉雅也『アメリカ紀行』(文藝春秋
朝吹真理子『抽斗のなかの海』(中央公論新社
江國香織『彼女たちの場合は』(集英社
田中慎弥『ひよこ太陽』(新潮社)
桜庭一樹『小説という毒を浴びる 桜庭一樹書評集』(集英社


『掃除婦のための手引き書』2019年は記念すべきルシア元年。令和と同じだから覚えやすい。
『私に付け足されるもの』「なにか知っている人は、知らない相手に教える際、必ず『ものすごく知らない』と見積もって会話をする傾向があって、私はそれが苦手だ」(p.58)ホントそれ! これに収録されている「白竜」とルシア・ベルリン「エンジェル・コインランドリー店」は、2019年に読んだコインランドリー小説の2トップ(他は知らんけど)。
『夏物語』『乳と卵』→『夏物語』と続けて読んだ。「→」に小説家ミエコの10年間のキャリアが詰め込まれている。大人になった緑子に会えてよかった。
『戦下の淡き光』読後すぐはそうでもなかったのだが、今年の海外文学何を読んだっけと振り返った時真っ先にこれが浮かんだ。表紙のランタンの淡い光のような余韻がずっと続いていたのかもしれない。
『フィフティ・ピープル』韓国文学これからもどしどし読みたい。斎藤真理子さんていったい何人いるの?
アメリカ紀行』パッと見、堀江敏幸本のようなシックな装丁、その薄さ、やや大きめのフォントサイズ、モノクロの写真、すべてを含めた本の佇まいがよかった。これを読まなかったら『デッドライン』を読まなかったと思う。
『抽斗のなかの海』著者初のエッセイ集。へそのごまの話などがでてくるが「クールな見た目だけど私じつはこーんなにお茶目なんです、てへっ」みたいなありがちないやらしさが全くない。精興社書体がしっくり馴染んでいる。
『彼女たちの場合は』はじめは、親のクレジットカードで旅行とかいい気なもんだと思っていたがだんだん引き込まれていった。表の見返しに真っ白なアメリカの地図が、裏の見返しの同じ地図には二人が旅した場所にしるしと地名が書き加えられている。読後に最後のページをめくって気づいたこの粋な趣向に一番やられた。
『ひよこ太陽』どよーんとした後味が記憶に残っている。語り手の「私」の元カノ(牛乳好き)が、2019年輝く!めんどくさい人大賞(褒めてる)。
『小説という毒を浴びる 桜庭一樹書評集』じつにおいしそうに本を読む人だなあ。名久井直子装丁。名久井さんも何人いるんだ?というくらい読む本の名久井装丁率高し。


■本があるおかげで愉快な一年でした。読むのが楽しくてたまりません。来年は古い本をもっと読みたいな(と毎年言ってる)。今年もありがとうございました。どうか来年がよい年でありますように。