y o m u : n e l

ヨムヨムエブリデイ

ハロー カップヌードルの海老たち。

シャツ一枚でいいくらいの暑い日があったかと思えば、冬のコートに逆戻りの日もあり、体調が追い付かない。21日の開花宣言からずっと暗くなって帰ることが続いていたので、近所の桜はどうなっておるのかと桜並木のある公園のほうへ少し遠回りして出勤する。うーん、これは三分咲ぐらいかなーと見上げていたら「だいたい三分咲ってとこだね」と60がらみの男性に話しかけられる。「毎年この右端の木が一番先に開花するよ」「へえ、はしっこで陽が一番当たるからですかね」とか適当に答えていると、今度はやはり60がらみの犬を連れた女性が「三分咲ぐらいかしらねえ」と話に入ってくる。みんな桜にウキウキしているのがわかる。しばらく三人でアハハウフフと見上げていたが、間がもたなくなり、じゃあそろそろ仕事に行きますんでと伝え「あら、行ってらっしゃい」「気をつけてね」の声に送り出される。朝っぱらからまったく知らんおっちゃん、おばちゃんと桜を見上げて、見送られ、これがいわゆる世間っていうものだろうか、と思った。なんとなくいい一週間の始まりだなとも。
しかし月曜日は特別疲れる。残業後、ようやく退勤。帰りはもう遠回りする気力もなく、人通りのない暗い道をうつむいて歩く。

ハロー 夜。 ハロー 静かな霜柱。 ハロー カップヌードルの海老たち。(穂村弘