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ヨムヨムエブリデイ

朝読

Web連載をまとめた春日武彦 穂村弘 ニコ・ニコルソン『ネコは言っている、ここで死ぬ定めではないと』(イースト・プレス)の中で、「自殺」を考えたことある?と訊かれた穂村弘が「まったくないなぁ」と即答し、「僕は図書館とか薬草園とか灯台とかで たくさんの本を読むのにぴったりなテーブルと椅子があって 散歩以外で外に出なくていい そういう理想の間取りへの憧れがあれば 自分には自殺する理由がないように思えるんだよ」と語っている。そうそれ!同じことを考えている人っているもんだな。

ここのところ仕事がハードで、暑さに体力まで奪われるのか、夜帰って、シャワー浴びて、ごはん食べて、横になっていたらいつのまにか寝ている。早寝するので朝早くに目が覚める。徐々に明るくなっていく空。開けた窓から入ってくる朝のひんやりした空気が気持ちよく、ゆっくりコーヒーを飲みながら小一時間本を読む時間が楽しみになった。夏は、風呂上りに、扇風機の微風を浴びながら、文庫本をペラペラめくっているうちに寝ている、というのもいい。

今読んでいるのは、柚月裕子孤狼の血』(角川文庫)。え、今頃?だが、なんとこれが初柚月裕子。極道ものというので敬遠していたのだが、とうとう手に取った。シリーズ三部作なので、先が楽しみじゃのう。初めて読む作家はわくわくするのう。

夏野菜

休日。朝から暑い。土曜は出勤だったので4連休とはいかなかったが、ちょっと早い夏休みといった感じで、3日間ゆっくり過ごす。毎年この時期になると、家庭菜園をしている友人が、食べても食べても追いつかないから貰ってくれ~と野菜をお裾分けしてくれるのだが、今年も、トマト、ピーマン、なす、育ちすぎて巨大化したきゅうりなどをどっさり貰う。

ラジオを流しつつ、ピーマンの肉詰め、夏野菜のカレーの下ごしらえをし、煮込む間の空白の時間に本の続きを読む。スパゲティーをゆでながらFMラジオにあわせてロッシーニの『泥棒かささぎ』の序曲を口笛で吹いていた「ねじまき鳥」の僕のように上機嫌だ。まだ明るいうちから、ひとっ風呂浴びてさっぱりし、あとは食べて好きなことやって寝るだけ。休日の幸福。夕方のニュースをつけると、トップニュースはオリンピック。「本日の新規感染者数」の影がうすーくなっている。

読んだ本、まとめて。吉玉サキ『方向音痴って、なおるんですか?』、安西カオリ『ブルーインク・ストーリー 父・安西水丸のこと』、しまおまほ『家族って』、酒井順子『鉄道無常 内田百閒と宮脇俊三を読む』、桜庭一樹『東京ディストピア日記』、伊藤比呂美『ショローの女』。あと辻村深月とか道尾秀介とか桐野夏生とかの読んでいない本のピースを埋めていく系の読書がめちゃんこ楽しい。

僕の好きな文庫本(10)

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長嶋有『タンノイのエジンバラ』(文春文庫)

カバー・斎藤深雪 解説・福永信

「群像」8月号の特集「長嶋有の20年」を読んだ。自分が『タンノイのエジンバラ』に出会ってから、もう20年近くもたったのだ。その時読んだのは、高野文子の装画が表紙の単行本版だったが、当時の自分にとてもしっくりきて、以来、新刊を楽しみに読み続けてきた。その都度、面白かった。でももし最初に読んだのが、芥川賞受賞作を収めた『猛スピードで母は』だったら、ハマっていなかったかもしれない。最初の一冊って責任重大だ。縁があれば、読み続けるし、なければそれっきり。運命の分かれ目。で、20年後の今、『猛スピードで母は』を読み返してみたらどう感じるか?ちょっと楽しみでもある。

短い一日

休み。16日に梅雨明けし、太陽ギラギラ、いきなり夏本番という感じ。俺のキッチンにも「海の家」が開店した。焼きそば、カレー、素麺、冷やし中華、ところてん。町に出ると、人がわんさかいて、もはや緊急事態宣言なんか関係なさそう。「緊急取調室」のほうがよほど緊急みがあると思う。
先週は、ボーナス&誕生日ウイークだった。コロナ対応の業務により仕事量は激増しているが、総仕事数が1~2割減少しているため、ボーナスは少しカットされた。割が合わないけれどいただけるだけありがたいと思うべきなのかもしれない。コロナ前は毎月その月の誕生日の人達をハッピーバースデイとともに祝うお誕生日会が開かれていたが、それもなくなりホッとしている。
鰻を食べて、ショートケーキと本を買う。本は、満を持して、滝口悠生『長い一日』(講談社)付録付き。もうこれだけで天にものぼる気持ち。短い日曜日が暮れる。

サトウのごはん

暑い一日。仕事終わり同僚と駅まで。途中コンビニに寄りアイスクリームを買って食べる。すっかり夏の気配。同僚と別れ、スーパー、本屋を巡り帰宅し一息ついたら、すごい雨が降りだした。昨夜から始まった『孤独のグルメSeason9』を見ながら夕ごはん。五郎さんもマスクをしている。何年かあとに、これの再放送を見ながら、そうそうあの時はみんなマスクをしていたよねー、なんて言えるようになっているだろうか。

松田青子『男の子になりたかった女の子になりたかった女の子』を読んだ。いつもの「ブラボー俺たちの青子!」といった読み心地で、今回もすごくいい。見返しのトゥルトゥルの紙の青がきれい。顔が映る。この本所収の「誰のものでもない帽子」は、サトウのごはん小説だと思った。子供を連れて経済DVの夫から逃れホテルで暮らす主人公が、スーパーでフリーズドライの味噌汁やカップラーメンなどの食料品を買うのだが、サトウのごはんだけ商品名で登場する。読むこちらも、ああ、サトウのごはんねとすぐわかるので、サトウのごはんはすごいと思う。

先日、日経新聞に載っていた南木佳士のエッセイ「本を棄てる」を読み、急に興味がでてきて、『根に帰る落葉は』(田畑書店)と『猫の領分 南木佳士自選エッセイ集』(幻戯書房)を借りてくる。小説は昔何冊か読んでそれっきり。それと、小池真理子のエッセイ集『感傷的な午後の珈琲』も。朝日新聞の連載エッセイ「月夜の森の梟」が終っちゃったので他のエッセイを読んでみたくなって。

この時期になると、もし講談社エッセイ賞が続いていたら今年は何だったのだろうと考えてしまうが、今年は佐久間文子『ツボちゃんの話 夫・坪内祐三』(新潮社)です。