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ヨムヨムエブリデイ

ケンタッキーにしない?

梅雨空。急にイレギュラーの休日出勤が入ったりして、シフトがぐちゃぐちゃで収拾がつかなくなっている。天候のせいか疲れのせいか、ずっと眠い。脳の咀嚼力ゼロなので、こんなカタログ本を流動食のように噛まずにペラペラ眺めている。

『名場面で味わう日本文学60選』(徳間書店
『キリンが小説を読んだら サバンナからはじめる現代文学60』(書肆侃侃房)

名場面は、神奈川新聞のリレー連載「日本文学あの名場面」を、キリンは、本よみうり堂の「現代×文芸 名著60」をまとめたもの。特に、名場面のほうは、各選者が推す名場面とともに楽しめるのがよかった。こんなのを読むと、未読の本は読みたくなるし、既読のものもまた読みたくなってしまう。

みんなへろへろなので、本日のランチはボスの計らいでケンタッキーに。すんごい久しぶり。チキンフィレサンドセットを注文。「フィレサンドをわんぱくに頬張る気怠いわ・た・し」の脳内セルフイメージは、これ(1ミリたりとも合っていない)。

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僕の好きな文庫本(9)

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椎名誠・選 日本ペンクラブ編『素敵な活字中毒者』(集英社文庫

カバー・山藤章二 鼎談解説・目黒考二 鏡明 椎名誠

このたび、ちくま文庫入りした岡崎武志編『愛についてのデッサン 野呂邦暢作品集』の帯にでかでかと「文庫になることが奇跡の1冊」とある。そうか、奇跡なのか(城山三郎風)。
ちびっこの頃読んだこの『素敵な活字中毒者』に、『愛についてのデッサン』から「本盗人」が選ばれていて、それが野呂邦暢を知った最初だった。当時愛読していた「あやしい探検隊」のシーナさんだ!とただそれだけの理由でこの文庫を買った記憶があるが、神保町で指を真っ黒にして古本のペーパーバックスを漁るJ.J.氏や、クイクイとテンポよくミステリーを読む殿山泰司の文章が楽しくてよく読み返した。その後、沢木耕太郎佐藤正午のエッセイで、野呂邦暢のことを目にするたび、あ、あの「本盗人」の人だと認識はしていたが、『愛についてのデッサン』を一冊通して読んだのは、2006年にみすず大人の本棚に入った時。佐藤正午の解説付きだった。みすず書房から随筆コレクションの刊行や、文遊社から小説集成の刊行を経て、2021年に『愛についてのデッサン』の文庫、しかもちくま文庫を手にして、胸熱。

「あやしい探検隊」のシーナさん!ぐらいしか知らなかった頃に、こんな豪華メンバーの文章に触れていたなんて、なんと贅沢なことか。その贅沢さは、今になってよくわかる。ただ、21人の執筆者の中で女性は田辺聖子だけ。別に、目くじら立ててピリピリしているわけでは全然ないけれど、昔の本を読む時は、こんなところに自然と目がいくようになった。

それいります?

日曜日。やっと休み。午前中、雨。窓の外の木々の緑が濃くてつやつやしている。

昔から炭酸飲料が大好きで、コーラやサイダーを浴びるようにぐびぐび飲んでいたが、シュワシュワしてさえいれば何でもいいのだということに気づいてからは、無糖の炭酸水を愛飲している。ずいぶん健康的になった。いちにーサンガリアの伊賀の強炭酸水や、サントリー天然水スパークリングに浮気しつつ、今はウィルキンソン赤ラベルに落ち着く。このたび「日本コカ・コーラ史上最強炭酸」が謳い文句のICY SPARKという新商品が出たので期待し購入し、さっそく飲みながらラベルをみると、原材料名:炭酸、酸味料、塩化Caとあり、ええっ、それいります?と思わずシンシンの口癖がでてしまった。結局シンプルなウィルキンソンに戻る。何を試しても必ず基本に戻るの法則。

dancyuの7月号を繰っているとハンバーガーやホットドッグを食べたくてたまらなくなる。「のむよむ。家飲み派のためのブックガイド」が毎号楽しみなのだが、今月号は、遠野遥と吉本ばなな、先月号は、滝口悠生江國香織、その前が、高山羽根子吉田篤弘と、なんかいつも絶妙な人選。先日読んだ西村賢太の日記にもこの連載のことが言及されていた。ちょうど一年前の号だ(肉料理の特集号)。

 帰室後、届いていた『dancyu』七月号を開く。随筆所載号。一人飲みの際のお薦め本として三冊を挙げたが(藤澤清造二冊、田中英光一冊)、その書影がイラストであるのが素晴らしい。新鮮、かつ味わいのある好発想。これはもう一冊を別途購入して、拙文所載保存の段ボール函と、六畳間の清造参考文献棚とにそれぞれ納めることとす。『一私小説書きの日乗 堅忍の章』(p.256)


明日はちょっと早めに出勤して、朝マックドトールのジャーマンドックを食べていこう。

僕の好きな文庫本(8)

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村田喜代子『八つの小鍋 村田喜代子傑作短篇集』(文春文庫)

装画・ささめやゆき 装幀・菊地信義 解説・池内紀

「ものすごく面白いのに、なぜかすぐに本が絶版になってしまって地団駄をふむ作家のツートップが、私にとっては河野多惠子村田喜代子だ。」「『真夜中の自転車』も『蟹女』も『ルームメイト』も『鍋の中』も『望潮』も絶版。ぜんぶまとめて復刊希望。」図書カード三万円使い放題企画に登場した際、こう書いていたのは岸本佐知子。御意!
新しめの著作はポツポツと文庫化されているが、初期の小説集では、芥川賞受賞作収録の『鍋の中』(文春文庫)以外は文庫化すらされていない。『鍋の中』もとっくに絶版。その代わりといった感じで刊行されたのが、初期の短篇からの選りすぐりを集めた、この村田喜代子傑作短篇集だった。「鍋の中」(芥川賞)、「白い山」(女流文学賞)、「真夜中の自転車」(平林たい子賞)、「蟹女」(紫式部文学賞)、「望潮」(川端康成文学賞)含む八篇収録。婆ちゃんオンパレード。意外に「熱愛」が好き。傑作短篇集がでただけでもありがたいが、できれば傑作集ではなくて、個々の短篇集を「文庫」で読みたい。

しつこく納豆二パック

相変わらず仕事に振り回され口内炎までできてしまう。痛い。夏ミカンを食べると罰ゲームのよう。
空き時間に、西村賢太『一私小説書きの日乗 堅忍の章』(本の雑誌社)をちびちびと。同じ繰り返しで飽きたみたいな感想を見かけたが、日記ってそういうものではないだろうか。晩酌後、お決まりの納豆二パック。日記は、このお決まりの積み重ねが楽しい。本の雑誌の最新6月号の日記には、ラストに「納豆一パックと白ご飯」が登場したけれど、やはり納豆二パックでないとね。真梨幸子酒井順子藤野可織をお好きなようなのも意外な感じでいい。

本屋に寄り道。文庫新刊コーナーで、松田青子『女が死ぬ』(中公文庫)が目にとまり、あれ?これ文庫オリジナル?と思ったら、『ワイルドフラワーの見えない一年』に数編のおまけと著者一言解説が付いていた。帯に〈「女らしさ」が、全部だるい。〉とある。ホントそれや! 世の男性は(と一括りにしたらいけないですね、私の周囲にいる男性限定)は、家庭でママがやってくれていたこと、炊事、洗濯、掃除、雑用などは、すべて妻や恋人や妹や職場の女がやってくれると思っている。やってくれるというか、やってあたり前。たまーに本人が食事の用意をしたりすると、あくまでも手伝うというスタンスで、これみよがしに、ドヤ顔でやった感をアピールしてくる。褒めて褒めて、と。それこそやってあたり前だ。SNSなどを見ると、時代が前に進んでいるような印象を受けるけれども、自分の周りはなーんにも変わっていない。そんな何もかもがホントに、全部、だるい。だるだる~。